« 又吉直樹「火花」を読みました | トップページ | 「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」:さても面妖な不協和音なり »

2015年8月18日 (火)

「この国の空」:戦時下の市井の人々と暮らし

352161_010
映画『この国の空』は、昭和20年夏の杉並区の市井の人々と生活の丹念な描写で描き出す戦争映画。こういう視点は貴重です。

思ったほどハードに反戦映画ではなく、あたかも戦時下の暮らしを伝える資料であるかのような作品。 もちろんその時代を体験しているわけではありませんが、銃後の人々の空気感がよく出ているように感じられました。

352161_002

空襲の脅威にさらされて明日をも知れぬ状況下で肉体を持て余し、本能的に辺りで唯一の壮年男性である長谷川博己に魅かれていく二階堂ふみを、生物学的な観察日記のような視線で描いていく荒井晴彦監督。

でも、神社の境内で長谷川がじりじりと二階堂に迫っていく場面は、一歩踏み出すと一歩下がるの繰り返しが、なんだかコントの演出みたいで、図らずも笑えてしまいました(すみません、真面目な場面なのに)。その後に、「いいところで」おばちゃんが現われて・・・っていう間合いもコント的でしたし。

352161_004
ここのところ「ラブ&ピース」、「進撃の巨人」、本作と、それぞれ異なった役柄をそれぞれ魅力的に演じた長谷川博己はノッてますね。旬ですね。現在の日本映画界において、一つのポジションを確保した感があります。しかもその昔の日本映画俳優を思わせる雰囲気があるのです。森雅之とか市川雷蔵とかのラインと言ったら褒め過ぎでしょうか。

352161_008

二階堂ふみは後姿のヌードもさることながら、言葉遣いやイントネーションが当時の山の手言葉で、これまた昔の映画の原節子あたりを思わせる口跡でした(彼女の柄には合わないのですが)。「~です」の「す」がかなり特殊だったりして。そういうところをきちんとやってくれる映画作りって、やはり本物ですね。嬉しいです。

「縁側」っていいもんだなあと思いました。

|

« 又吉直樹「火花」を読みました | トップページ | 「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」:さても面妖な不協和音なり »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/42098/61215352

この記事へのトラックバック一覧です: 「この国の空」:戦時下の市井の人々と暮らし:

» この国の空〜一番きれいなときに脱いだ二階堂ふみ [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。 高井有一原作、荒井晴彦監督。二階堂ふみ、長谷川博己、工藤夕貴、富田靖子、石橋蓮司。19歳で終戦を迎える主人公里子(二階堂ふみ)は引用される詩「わたしが一番 ... [続きを読む]

受信: 2015年8月18日 (火) 23時38分

» この国の空 [風情の不安多事な冒険 Part.5]
 日本  ドラマ&戦争&ロマンス  監督:荒井晴彦  出演:二階堂ふみ      長谷川博己      工藤夕貴      富田靖子 【物語】     (シネマトゥデイ) ... [続きを読む]

受信: 2015年8月19日 (水) 14時35分

» 荒井晴彦 『この国の空』 わたしが一番きれいだったとき [映画批評的妄想覚え書き/日々是口実]
 『さよなら歌舞伎町』『海を感じる時』の脚本家・荒井晴彦の監督作品。荒井晴彦が監督業をするのは、『身も心も』以来18年ぶりとのこと。  原作は高井有一が1984年に谷崎潤一郎賞を受賞した同名小説。  この作品は昭和20年3月から始まり、同年8月14日(つまり終戦の前日)で終わる。今年の夏は戦後70年ということで、戦争を扱った映画がいくつも公開されているが、『この国の空』もそんな1本で...... [続きを読む]

受信: 2015年8月19日 (水) 19時00分

» この国の空 [象のロケット]
1945(昭和20)年、東京・杉並区。 19歳の里子は、結核で父を亡くし母・蔦枝と2人暮らし。 ある日、庭に掘った防空壕が、雨で水浸しになってしまう。 すると、隣家の男・市毛が、うちの壕に入ればいいと声をかける。 38歳の市毛は銀行支店長で、妻子は田舎へ疎開し一人暮らしだった。 隣家として互いに助け合い、話をしたりするうちに、里子と市毛は想いを通じ合わせていく…。 戦争ヒューマンドラマ。... [続きを読む]

受信: 2015年8月20日 (木) 11時32分

» この国の空 [映画的・絵画的・音楽的]
 『この国の空』をテアトル新宿で見ました。 (1)脚本家の荒井晴彦氏の監督作品ということで、映画館に行ってきました。  本作(注1)の冒頭は、昭和20年の東京・杉並(注2)。  雨が激しく降る音がし、またヴァイオリンの音が流れています。  次いで、雨が降ってい...... [続きを読む]

受信: 2015年8月21日 (金) 07時29分

« 又吉直樹「火花」を読みました | トップページ | 「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」:さても面妖な不協和音なり »