「この国の空」:戦時下の市井の人々と暮らし
映画『この国の空』は、昭和20年夏の杉並区の市井の人々と生活の丹念な描写で描き出す戦争映画。こういう視点は貴重です。
思ったほどハードに反戦映画ではなく、あたかも戦時下の暮らしを伝える資料であるかのような作品。 もちろんその時代を体験しているわけではありませんが、銃後の人々の空気感がよく出ているように感じられました。
空襲の脅威にさらされて明日をも知れぬ状況下で肉体を持て余し、本能的に辺りで唯一の壮年男性である長谷川博己に魅かれていく二階堂ふみを、生物学的な観察日記のような視線で描いていく荒井晴彦監督。
でも、神社の境内で長谷川がじりじりと二階堂に迫っていく場面は、一歩踏み出すと一歩下がるの繰り返しが、なんだかコントの演出みたいで、図らずも笑えてしまいました(すみません、真面目な場面なのに)。その後に、「いいところで」おばちゃんが現われて・・・っていう間合いもコント的でしたし。
ここのところ「ラブ&ピース」、「進撃の巨人」、本作と、それぞれ異なった役柄をそれぞれ魅力的に演じた長谷川博己はノッてますね。旬ですね。現在の日本映画界において、一つのポジションを確保した感があります。しかもその昔の日本映画俳優を思わせる雰囲気があるのです。森雅之とか市川雷蔵とかのラインと言ったら褒め過ぎでしょうか。
二階堂ふみは後姿のヌードもさることながら、言葉遣いやイントネーションが当時の山の手言葉で、これまた昔の映画の原節子あたりを思わせる口跡でした(彼女の柄には合わないのですが)。「~です」の「す」がかなり特殊だったりして。そういうところをきちんとやってくれる映画作りって、やはり本物ですね。嬉しいです。
「縁側」っていいもんだなあと思いました。
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コメント
初めまして。
長谷川博己主演の映画、見たいですね!
投稿: 師子乃 | 2021年1月 9日 (土) 19時31分
おお、獅子乃さん、はじめまして。
そうですね。大河の撮影も終わったことだし、そろそろ映画で暴れてほしいものですね。
投稿: 大江戸時夫 | 2021年1月 9日 (土) 22時55分