「村上さんのところ」は、やっぱり楽しい
村上春樹の新刊『村上さんのところ』(新潮社)を読みました。今年の1月から数か月間、新潮社の特設サイトでやっていた村上氏の答える「悩み相談」を抜粋して書籍化したものです。それにしても119日間の期間中に37,465通の質問があり、村上さんはそれを全部読み、その中から3,716の回答を書いたってんですから、すごいですよね。
この本には、その中からセレクトした473の質問と回答が収録されています。なにしろ四段組みで文字がびっしりなので、読むのにも時間がかかります。「電子版」の方は3,716問すべてを収録しているそうなので、ちょっとやそっとでは読み切れないです。さすがにビビッて、やめておきました。
多種多様な質問があり、村上さんの回答も硬軟取り混ぜて変幻自在であり、なかなかに楽しい本です。
読んで得たことその1=村上さんは「ハルキスト」と言われることを嫌っており、「村上主義者」という呼び名を推奨しております。 その2=原子力発電所は“nuclear plant”だから「原子力(atomic)発電所」というのはまやかし。これからは「核発電所」と呼びませんか、と提唱しております。
その他にも現在の日本の右傾化を憂いたり、ヘイトスピーチの醜さに怒りと悲しみを覚えたり、真っ当な良識人としての村上さんの姿勢に、あらためてシンパシーを感じます。彼の小説同様、読むことで心が浄化され、ポジティブになるような感じがいたしました。
猫に関する応答とか、恐妻家の一面とかも面白く、軽やかに楽しい一冊でした。
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