映画『キングスマン』ムチャクチャおもしれー!! でも観る人を選ぶ面白さでしょうね、このテイストは。監督が『キック・アス』のマシュー・ヴォーンですから、エグさと悪趣味に近いポップさが只事ではありません。でも「英国紳士」要素によって中和されているという、絶妙なバランスなのです。
ポスターやチラシを見た限りでは「渋いスパイもの」にしか思えなかったのです。コリン・ファース主演ですしね。ところが、予告編を見て「ん?アクション結構凄いんじゃん」となり、本編を観て、「えー、何コレ?! スゴ過ぎる!」となったわけです。伝えるのがなかなか難しい種類の面白さでしょうが、それにしても伝わってなさ過ぎ!です。
スパイ映画にしてVFXアクションにしてスラッシャーにしてポップアートにしてビルドゥングスロマンにして軍事教練ものにしてコメディー。こんな何でもアリのごちゃまぜ映画、普通なら破綻してしまいますが、見事にまとまっちゃってるんですよねー。おまけに台詞でも言及されている『マイ・フェア・レディ』的要素も、上手にこなしてますし。マシュー・ヴォーン、おそるべし! 随所の「意外性」も冴えてます。
コリン・ファースの英国紳士ぶりがもう最高で、いやー、やっぱりスーツはカッコイイっすねえ。現代の男の鎧です。おまけに彼のアクションや秘密兵器が、またスゴイことになってます。そして言うことにゃ“Manners maketh Man.”(makesじゃなくてthなんですよ!「メイケセ」ですよ!)ですから!! この映画ではマイケル・ケインもそうですけど、見事なクイーンズ・イングリッシュなのです。
そしてここらの(スーツやメガネを含めたダンディズムの)「師から弟子への継承」がラストに出て来るところは、もう最高です! いやー、娯楽映画をわかっていらっしゃる。
敵がサミュエル・L:ジャクソンなもんで魅力たっぷりの悪役で、成功してます。その手下の両足義足がサーベルになっている人間凶器の女。彼女の登場シーンの人間真っ二つって、いくつもの映画で描かれてますけど、「足で」ってのは『殺し屋1』ぐらいなんじゃないでしょうか。でも血も中身も出ないので、残酷さはほとんど感じられません。 全編にわたって、そういう配慮がなされているので、少しヤバさを漂わせながらもエンタテインメントの枠内にきっちり着地しております。終盤のエルガー『威風堂々』に乗せての頭吹っ飛びシーンも、ポップアートのごとく花火のごとく幻覚のごとくといったサイケデリックな処理を施しているので、ちっとも残酷に見えず、むしろ快哉を叫びたい見事な映画的発明になっているのです。ただ、ここらの感覚も評価の分かれるところなんでしょうねえ。大江戸は大好きです。
続編もあり得そうですよね。奇策を使っての「あの人」の復活もあるかも知れませんし。
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