「GONINサーガ」:雨は降り血は流れているけれど・・・
映画『GONINサーガ』は、あの『GONIN』から20年たっての続編ということで、しかも主要人物全員死亡の作品だったので、どうやって続編を作るのか?という興味もあり、大いに期待していた作品。でも結論としては、満足のいく出来ではありませんでした。 そもそも大江戸は『GONIN』よりも『GONIN2』が、それよりも名美シリーズが好きでして、『GONIN』をそれほど評価してはいないのです。でもその低いハードルの下を行ってしまったなあ。
主要な俳優の年齢が前作よりも若いってこともあって、どうにも「軽い」というか、作品の強度が不足しています。特に主役格の東出昌大が「あーあ、やっぱり」って感じに大根だったので、そこに滲み出るものが何もなくてがっかりでした。 狂気の宿し方からいけば、一番健闘していたのは安藤政信でしょうけど、それだって軽量級なので、例えば菅田俊の貫録の前ではかすんでしまいます。困ったもんです。 根津甚八の1作限りの復帰も話題になっていますが、うーん、あれだけではねえ・・・登場シーン、いくらなんでも短過ぎます。評価しようがありません。容貌も別人のように油っ気がぬけちゃいましたし。
物語には説得力がないと言うか、「え? なんで??」って感じの強引な展開も多いのですが、石井隆としては久々に「皆殺しのリアルな銃撃戦」をやりたかった、ひたすらやりたかったってことだけなんでしょうね。とにかくあきれるほど拳銃だらけの世界で、人がゴロゴロ死んでいきますし、むしろ自ら死にに行ってますし、命の軽さったらありません。
ドラマチックなシーンンには常に雨が降っている石井作品ですが、本作も最初から最後まで降りまくっています。クライマックスにはなんと屋内にまで雨が降りしきります。なるほど、その手で来ましたか!
壁にもたれかかりながら復讐の時を待つ、疲弊した奴ら~スクリーンを切り裂いて最後の撃ち合いに飛び出す奴らには、『明日に向って撃て!』のラストがダブります。 もうストーリーの辻褄とかはどうでもよくって、ひたすら銃撃と殺戮の嵐。闇があって、雨があって、銃と暴力があって、赤い血があって・・・それで石井隆としては満足なのでしょうけれど、小生は満足しきれませんでした。石井隆にはもっと「情緒」と「情念」を期待してしまうのです。 闇金襲撃からヒットマンとの抗争に至る中盤がかなり面白かっただけに、残念です。
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