「私たちのハァハァ」:リアルで今日的な傑作
映画『私たちのハァハァ』、傑作です! 正直ここまで素晴らしいとは、予想できませんでした。今この時代の青春を活写する映画って、それぞれの時代にありますけど、本作はそれらの中でも一際異彩を放っています。
女子高生たちに手持ちのデジタルビデオカメラを持たせることにより、ベースとなる(映画の)映像の中にその映像を織り交ぜる手法。その雑な映像のリアルな生っぽさ、今っぽさ。
北九州→東京のロード・ムービーになっています。その間に4人の女の子たちの間に生じるちょっとした予想外やちょっとした軋轢やちょっとした冒険。その空気が実によく描かれています。大江戸は結構「空気を描くことが映画である」と思っていたりするので、これには唸りました。軽い映画、雑な映画に見えて、その実見事に映画ならではの空気を醸し出していました。
4人のキャラクターの描き分けと、そのコンビネーションも素晴らしく、大いに賞賛したいところ。この4人の組み合わせが、かわいい子もいればそうじゃない子も・・・ってあたり、リアルです。そして4人の芝居が、芝居と思えないほどのリアルさ、生々しさで、目撃者である我々を惹きつけます。今日的な時代感覚に溢れています。 彼女たちの家族らを登場させず、(会話やメールや電話で)間接的に存在を示すだけというのもキッパリした処理で、評価できます。
終盤に彼女たちが大ゲンカをする場面の、あのリアルな展開とデスパレートな空気には圧倒されました。もちろん彼女たちの演技の凄さにも感服しました。 その後の静かな高速バスの車内シーンにおいて、画面にはめこまれるSNSの文章によって彼女たちの空気の変化を見せる演出も、それによる情感の描出も、今日的な映画手法として感銘を受けました。
クライマックスのクリープハイプのライブ会場シーンの「そう来たか」感もハンパ無かったです。松居大悟監督、ちゃんと映画をわかっていらっしゃる。
ラスト~エンドタイトルにかぶせて渋谷の街を(NHKホール前からスクランブル交差点へと)疾走する彼女たち! ああ、セーラー服を着て横に4人並んで・・・この絵って、『ラブ&ポップ』(庵野秀明)のラスト~エンドタイトルバックみたいじゃないですか。そして、スクランブル交差点の先には、『ラブ&ポップ』の4人がルーズソックスを濡らしながらバシャバシャと歩いた渋谷川が、今も流れているのです。 スクランブル交差点の中央にいる4人は、世界の中心にいるかの如くです。若さは無敵、女の子は無敵なのです。
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