「黒衣の刺客」:誰が何をどうしてるの?
映画『黒衣の刺客』には全く歯が立たなかった感じ。正直言って、どんな物語で、今何が行われているのか、観てる間中ほとんどわかりませんでした。って言うのも極めてバカみたいで恥ずかしいのですが、本当のことだからしょうがありません。まあ、もともと侯孝賢とは相性の悪い大江戸なので、今回は降参ってことで・・・。とにかく無力感に満たされました。
物語性があるはずの武侠映画なのに、ストーリーを語ろうという意志などさらさら無い感じで、不親切極まりないですね。監督が物語を把握していれば、映画ではそれを全て描くまでもないという考え方なのでしょうか?(へんなの) しかも、どのシーンもとにかく静謐で、動きも少ないのを長回しで撮ってるものですから、シーン後半になると集中力が失せてきたり、睡魔が襲って来たりするのです。あー、眠かった。
レビューなどを読むと、多くの方が「物語や描写はわかりにくい」ことを指摘しながらも、口を揃えて「映像美が圧倒的」とおっしゃっています。でも、果たしてそうかなあ? まあ確かに、スタンダード画面に描かれる霧深い山中の場面とか、風に揺れる紗幕を通して見る室内の人物とかは印象的ですが、名手リー・ピンビンの撮影なら、もっとできるんじゃないかなあ。少なくとも大江戸の「圧倒的映像美」の基準は、ちょっと違うんですけどねえ。
アクションはリアリズム。ワイヤーワークでピョーンと跳んだり、木の葉や花びらが舞ったりすることはありません。でも地味過ぎて、スタンダード(1:1.33)の画面内では動きも少なくて、見せ場とはなっておりません。そもそもどういう因果の誰と誰が、どういう文脈で戦っているのかがわからないので、アクションを見ていても眠くなる始末なのです。
カンヌで監督賞を取っているぐらいですから、本作を好きな人は多数いらっしゃるのでしょうけれど、大江戸とはとことん相性が悪かったようです。
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コメント
こんにちは。
そうでしたか、大江戸さんとは相性が悪かったのですか…。
相性のいい・悪いで言えば、劇場で睡魔と戦うという稀な作品でしたので、そういう意味では私にとっても相性が悪かったのかもしれないのですけれど、でも、非常に印象に残り、心に刻まれた作品だったのは間違いありませんでした。
ホント、作品によって色々な捉え方があるので、興味深いですね!
投稿: ここなつ | 2015年10月14日 (水) 13時29分
ここなつさん、そうなんですよ。
映画って、ある人にとって最高の作品が、ある人にとっては最低の作品だったりするので厄介なんですよね。まあ、そこが面白くもあるのですけれど。
投稿: 大江戸時夫 | 2015年10月14日 (水) 22時34分