「サム・ペキンパー 情熱と美学」:砂漠の破天荒オヤジ
映画『サム・ペキンパー 情熱と美学』は、ペキンパーの伝記を書いた映画史家にして映画製作者のドイツ人監督が手掛けた伝記ドキュメンタリー。ペキンパーゆかりの人々へのインタビューと、作品からのフッテージでできているオーソドックスな作品ではあります。
でも主人公であるペキンパーが、非常識極まりない「異常者」なので、アナーキーな香りが漂っています。いやー、聞きしに勝るヒドイ奴ですね。しかも後年は(酒に加えて)コカインにまで溺れて、そこから先を棒に振ってしまったようなものですから。ま、そういう破天荒な奴だから、こういう映画を作ってもらえるわけですけどね。映画監督になってなかったら、犯罪者として早死にしてたかも知れません。
ボーグナイン、コバーン、アリ・マッグロー、クリス・クリストファーソンらが出て来るインタビュー・シーンは普通に及第なのですが、作品フッテージがあまり無く、スティル写真だったり予告編映像だったりするのが、かなり物足りないですね。ペキンパーのトレードマークであるスローモーションの使用例など皆無に近いんですから(『ワイルドバンチ』の橋落下シーンぐらいでしょうか?)、ペキンパーの「人と作品」ってことにおいては、後者の比重があまりにも少ないと思います。
大江戸にとってのベスト・オブ・ペキンパーはもちろん『ワイルドバンチ』です。そして、あの傑作を作った彼の遺作がジュリアン・レノンのミュージック・ビデオだってのを知って、唖然としました。その2本のうち1本(“Valotte”)を検索して見たのですが、特にペキンパーらしいとも言えない、どうってことのないものでした。まあ、そんなもんかもね。
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