「顔のないヒトラーたち」:「13分」より上出来ですよ
映画『顔のないヒトラーたち』は、終戦から13年後=1958年のドイツでアウシュビッツは忘れ去られようとしていた!というアッと驚く事実を教えてくれます。「臭いものに蓋」というか「無かったことにする」というか、怖いけどありがちなことだと思います。日本人が我が身を振り返るのに好適な題材です。
昨日紹介した『ヒトラー暗殺、13分の誤算』と較べて、テーマの明解さ、映画としてのメリハリやドラマ、メッセージの強さなど、大いに上回っています。単純に映画として面白いし、入魂の一作と言えるでしょう。 だけど、『13分』と較べて、公開規模や劇場、時間帯、マスコミ露出(『13分』には朝日新聞社がついてますから)と全てが悪条件で、上映期間も短く終了って感じです。まあここらは配給会社(『13分』はギャガ、本作はアットエンタテインメント)の規模の差ってことなんでしょうけど、判官びいきの小生としては非常に残念ですね。
青臭い程に正義一直線の検察官が執念に燃えて告発しようと調査を重ねるのですが、終盤になってある事実がわかり一気にモチベーションダウンしてしまうのです。そのあたりの弱さ、だらしなさが見ていてイラッとくるところなのですが、まあセリフにもあったように「完璧な人間はいない」ので、これはしょうがないのでしょうね(このセリフを言った同僚検事が、その後に「オレ以外は」と付け加えたのには笑いました)。
その同僚検事を演じたヨハン・フォン・ビューローは、『13分』にも出ていて、ナチスの党員を憎々しく演じてました。本作では結構いい人。
悪名高いナチスの医師メンゲレが出て来る悪夢の場面で、自分の手や目が縫い合わされているという映像は、短いけどかなりのインパクトがありました(ほとんどホラーでしたが)。 でもラストの字幕でも示されますが、メンゲレって結局1979年(67歳)まで逃亡先の南米で生きていたんですよね。そこがどうにも口惜しいというか納得できない事実です。
ラスト・シーンのみならず、正義派青年のまっすぐな熱意の勝利(少々の挫折を含む)みたいな展開は、あたかもハリウッド映画のようでありました。
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