「起終点駅 ターミナル」:健さんみたいな佐藤浩市
映画『起終点駅 ターミナル』は、今日びよくこんな地味な企画が通ったなあ・・・って作品。でも、いいじゃないですか、こういう映画が(客の入りが悪くても)正月作品を前に東映の映画館にかかっているのって。そういう作品って昔からあったけど、大傑作じゃないけど「ちょっといい」作品があったりして、支持したいなあ。まあ関係者としては興行成績に目をつぶってもいいとは言っていられないのでしょうけれど。
篠原哲雄監督らしい端正な佳品。静かに、ゆったりとした描写だけれど、飽きることはありませんでした。むしろ、メジャーの日本映画らしい日本映画として、こういう作品って常に必要だよねって感じ。声高ではないけれど、大きな話ではないけれど、「小さないい話」なんです。出て来る人たちも、(一人を除いて)大体はいい人ですし。 終盤の、じんわりとそくそくと胸に染み入る味わいには捨て難いものがありますね。
アヴァン・タイトルが20分近くもあって、「おお、東映系の映画でそんなのって『処刑遊戯』以来では?」と思った次第。まあ、主人公(佐藤浩市)の若き日と現代をタイトルの前後で分けているのですけどね。
佐藤浩市はあんまり好きではないのですが、本作の彼はなかなか良かったですよ。しょぼくれた味が出ておりまして。着てる服もいちいちダサいんです。でも終盤に彼が本田翼を突き放す「だめだ! 絶対に戻ってくるな」は、カッコ良かったなあ。東映映画のストイックなヒーローの系譜を継いでおります。そういえば、ふた昔前の健さんが演じたらぴったりの役ですもんね。彼と本田翼の親子のような恋人のような微妙な感情の揺らぎもなかなかです。
本田翼は柄に合った役をさらりと演じておりましたが、この人は不思議な存在感を持っていますよね。決して演技が巧くはない(むしろヘタ)のですが、目を離せないような素材の魅力があります。モデル出身だからということはないと思うのですが、何かどの役者とも違う感覚が常に漂うのです。ただ、これまでにもひどい芝居をいろいろ見ているので、「使い方次第」の人なのだと思います。
観ていて、とってもザンギが食べたくなりました。帰りにスーパーで味付き唐揚げを買ったのですが、映画の方がうまそうだったなあ。
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