「FOUJITA」:映像の強度はすごいけど・・・
小栗康平監督10年ぶりの映画『FOUJITA』は、ある程度藤田嗣治のことを知っていないと、わかりにくいかも知れません。彼の人生の一時期のエピソードを断片的に重ねていき、「順を追った展開」や「物語の面白さ」とは無縁です。
1920年代パリの狂騒を描きながらも、静かな静かな作品です。その静けさの中で美しい映像を追いながら、観る者が無の境地に誘われるという、いわば「禅」のような映画です。ショットのサイズはロングショットかフルショットがほとんどで、決して寄りません。アップはありません。感情的なものを排除しようという監督の強い意志を感じます。
オダギリジョーのフジタそっくりの変身ぶりは公開前に写真で見て「おお!」と思ったものでしたが、これだけ「引きの絵」ばかりではその妙味を鑑賞することができずじまいなのでした。
一方で、地眉を消したメイクの中谷美紀は、力なくしゃべるところも含めて、何か妖怪のようでありました。
一にも二にも映像が素晴らしい作品でした。単に美しいと言うよりも、構図が完璧で、光の具合も良く、とにかく「絵」に強度があるのです8撮影=町田博)。
でも結局作品としては、あまりにも言いたいことが不明瞭というか・・・。特に戦争画に関しては、何が言いたかったのか??って感じです。キツネが跳ねる絵なんかも、・・・理解不能でありました。
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