「恋人たち」:リアルな重い球
映画『恋人たち』は、橋口亮輔監督7年ぶりの力作。映画から滲み出す覚悟や、映画としての強度が、ハンパないです。プロの役者たちを使いながらも、メインの3人が知らない顔ってことで、そのリアルな市井感が息苦しい程に迫って来るのです(あのおばちゃんの、いろんな意味での見苦しさも凄かったなあ)。
現代日本の病が集約されたような映画でもあります。人生のハンディキャップを背負っているような人々の、あえぎやうめきが聞こえそうな物語。それでも時折挟み込まれるユーモアに救われる思いがします。
橋口監督の(映画的)筆致は、あくまでも骨太です。普通、顔の知られていない役者を中心にすると、映画が痩せて貧相になってしまったりするものですが、本作のゴツゴツしたダイナミズムは、野球に例えれば「ストレートの重い球」です。観る者のキャッチーミットにズシリと響きます。
(以降ややネタバレあり) 終始重く苦しい物語だったので、ラストの「空気の変化」=一条の光というか、ほの見える希望にはほっとしました。それでこそ映画の厚みが増し、作品の格が上がるというものです。
それにしてもどうして『恋人たち』というタイトルなのでしょうか? 残念ながら小生は、いくら考えても答えを見出せませんでした。
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