「杉原千畝 スギハラチウネ」:善意の判断が世界を救う
映画『杉原千畝 スギハラチウネ』は、そんなに大々的に公開されたけではないし、何かしら地味な扱いなのですけど、観てみたら結構な大作というか、しっかり製作費がかかっているのがわかります。他人事ながら回収が心配になってしまいます。12月5日公開ですが、正月映画とは言えない雰囲気ですし、ってゆーか正月までもつのかしらん? 日テレの映画ではあるけれど、TVの露出もそれほど多くなかった気がしますし・・・。
「日本のシンドラー」と言われる杉原千畝さんの長編映画って、これまで作られていなかったんですね。意外な気もします。でもTVではいろんな形で取り上げられてきて、活字メディアを含めて新鮮味は薄い素材と言えるかも知れません。ただこの映画自体が正攻法ではありますが、映画としてのコクが無いというか、TVのスペシャル・ドラマ的というか、残念ながら平凡なんですよねえ。
唐沢寿明の英語が板についていました。発音やスピードに問題がなく、丁寧さや威厳をまとわせながら、ちゃんと英語に感情が入っていました。つまり、台詞を思い出すだけでいっぱいいっぱいってな状況ではなかったということです。素晴らしい。
妻役の小雪は、以前より大江戸の苦手なタイプなのですが、うーん、本作でもいろんな意味でしんどかったですねえ(日本のしんどらー)。
それにしてもナチスドイツに反抗し欺くようなことをあれだけやっておきながら、杉原に対しては「(ルーマニアに行って)何もするな!」という以外のおとがめなしだったというのも、驚くべき話ではあります。おそらく周囲の人々も、心の中では杉原の行動に賛同していたということかも知れません。 ウラジオストックでのエピソードからも推測できるように、日本人もその他の国(ドイツも含む)の人々も含めて、多くの善意の人々がこの脱出(evacuation)を後押ししてくれたのでしょう。 そういう大なり小なりルールや命令を超えた判断こそが、(ハンナ・アーレント言うところの)「悪の凡庸さ」を超えて世界を守っていくのだと感じています。
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