「創造と神秘のサグラダ・ファミリア」:薄味のドキュメンタリー
映画『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』は、あのガウディの、あのバルセロナの、あのサグラダ・ファミリアの現在を映すドキュメンタリー。なんでも完成までに300年かかると言われていたのが、建築技術の進歩で大幅に工期が短縮され、公式発表では2026年(ガウディ没後100年)の完成予定になっているのだとか。あと10年!なのですね。
小生もその昔訪れたことがあるだけに、思いもひとしおです。その頃(1990年頃)は生きているうちに完成するかどうか怪しい感じでしたもんねえ。 日本のゼネコンによって工期の短縮が成されたような話を聞いたことがありましたけど、この映画ではそこらへんへの言及は一切ありません。かなりシンプルに「今、こんな感じで作ってます」っていうことを人と現場から物語るドキュメンタリーです。
出て来る人は彫刻家(有名な日本人の外尾さん)とか建築家とか研究者とか宗教家とか・・・。ガウディの生涯を通り一遍に追いはしますが、深く掘り下げてはいません。今を描きながらも、工法の工夫だとか秘話だとかに迫ることもなく、なんだか物足りない印象です。さらっとし過ぎていて、ドキュメンタリーならではの「ぐいぐい迫る迫力」に欠けるのです。
まあそれでも、ガウディの有機生命体的な曲線に溢れたデザインとは異質な、現代的で角ばった彫刻がゲートを飾っていたり、抽象画家の手によるステンドグラスが教会内を彩ったり・・・ということがわかりました。ガウディの手を離れて、多様なものを呑みこんで、進んでいくのですね。それともガウディにとっては、後世にそうなっていくことすらお見通しだったのでしょうか。
かつて勅使川原宏監督の『アントニー・ガウディ』(1984年)というドキュメンタリーがありました。もうほとんど忘れてしまいましたが、サグラダ・ファミリアのみならずガウディがバルセロナに遺した建築を淡々と写した作品でした。それとは違うアプローチですけど、なんだかどちらも食い足りない印象。この題材に関しては、もっと下世話に、いろいろと説明的な作品であってもいいような気がします。まあ、そういうのは2026年頃に作られるのかも知れませんね。
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