「ローリング」:転落男の奇妙な怪異譚
映画『ローリング』が「キネマ旬報ベストテン第10位になっていて、観落していた小生は渋谷のアップリンクでの再上映で鑑賞。かなり風変わりで面白かったです。冨永昌敬監督って、『パビリオン山椒魚』『パンドラの匣』『乱暴と待機』と、どれをとっても曲者ですもんねえ。
なぜか水戸のご当地映画なのですが、地方都市のさびれ感、行き詰まり感が画面に溢れていて、それが本作のベースとなっています。なんせヤンキーもしくはマイルドヤンキーみたいな人間しか出て来ないし、主人公(川瀬陽太)に至っては、邦画で久々に観るほどのダメダメ男。彼の流転やしょーもなさを見ているだけで、古き良き日本映画の伝統を感じられるのです。
全編を通して、変なユーモア、変なギャグが飛び出し、どこまで真面目なのかふざけてるのかわかりません。しかも全編を通して、そこはかとなく怖いのです。他の作品でもそうですが、冨永監督の作品って「怪異譚」と呼べる感覚があります。鈴木清順の『ツィゴイネルワイゼン』みたいな、何やら不安で、ぞっとするような、嫌な感じ。あの感覚です。
ラストではさらりと人間の不可思議を突き付けていて、これまた奇妙なひっかかりを残してくれます。 キャスト、スタッフのタイトル文字もまたいい感じに奇妙でしてね・・・。
| 固定リンク
コメント