« 「ザ・ウォーク」:ぞわっとし、手に汗握る緊張感 | トップページ | U-23日本代表、リオ五輪出場を決める! »

2016年1月25日 (月)

「ブリッジ・オブ・スパイ」:古き良き米映画の伝統

353946_002
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』は、ヒューマニスト・スピルバーグらしい信念と正義の物語。コーエン兄弟の脚本ですが、結局浮き彫りにされるのはスピルバーグがフランク・キャプラの正統後継者だってこと(今更ですが)。ああ、ラストの家族の使い方なんて、本当に古き良きアメリカ映画の伝統じゃないですか。トム・ハンクスがジミー・スチュアートじゃないですか。

353946_013

2時間22分の作品なのに1時間50分ぐらいに感じました。それだけテンポが良く話にムダが無いということで、ここらもオールド・ハリウッド流。また、常にキャメラが動いているような絵づくりはスピルバーグ印。今回もヤヌス・カミンスキーの撮影が見事です(いつもながら印象的な逆光とか)。

353946_001
真面目で静的な話なのに、大いなるエンタテインメントに仕立て上げてくれるのも、スピルバーグならでは。唯一開放感のあるアクション・シーンと言える米偵察機エマージェンシーからの緊急脱出シーンで、開いた落下傘の頂点の丸い穴から、落下中のパイロット目線で上空の偵察機が爆発するろころが見えている画(え)なんて、・・・天才です! スピルバーグが映画の神様に祝福されていることを、このショットが示して余りあります。

ベルリンの壁を石材とセメントで実際に作っている画なんてのも、小生は本作で初めて目にしました。うーん、面白い。そして、その画づくりのセンス。

353946_011

でも本作で全てを、とは言いませんが、多くをかっさらってしまうのはソ連のスパイ、アベルを演じたマーク・ライランス! これまでは小さな映画が多く大江戸は知らない役者でしたが、いやー、淡々とポーカーフェイスでいい味出してます。これだけ地味な役で抑えた芝居なのに、ここまで(ある種の魅力を伴って)この人物の酸いも甘いも表現できてしまうというのは、只事ではありません。観ている間に観客は、この風采の上がらないおじさんを好きになってしまうのです。 多くの映画賞で助演男優賞を獲得し、オスカーにもノミネートされているってのも、さもありなんです。

ラストの「大いなる眠り」、いいですねえ。スピルバーグですねえ。ハンクスの眠りっぷりと、奥さんの表情。シンプルに、オールド・ハリウッド的に、感動できるのです。

|

« 「ザ・ウォーク」:ぞわっとし、手に汗握る緊張感 | トップページ | U-23日本代表、リオ五輪出場を決める! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「ブリッジ・オブ・スパイ」:古き良き米映画の伝統:

» ブリッジ・オブ・スパイ〜実はソ連側の大勝利 [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。原題:Bridge of Spies。スティーヴン・スピルバーグ監督、イーサン&ジョエル・コーエン脚本。トム・ハンクス、マーク・ライランス、スコット・シェパード、エイミー・ライ ... [続きを読む]

受信: 2016年1月25日 (月) 23時59分

» 『ブリッジ・オブ・スパイ』 冷戦時代の知られざるヒーロー [映画批評的妄想覚え書き/日々是口実]
 スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作。前作『リンカーン』と同じように歴史的な出来事を題材としている。また、脚本にはコーエン兄弟も名前を連ねている。  冷戦時代、アメリカとソ連は互いに核兵器で威嚇し合って身動きがとれない状態。そんなときに暗躍していたのがそれぞれのスパイたちだった。優秀な弁護士であるジェームズ・ドノバン(トム・ハンクス)は保険分野を専門に扱っていたが、彼に持ち...... [続きを読む]

受信: 2016年1月26日 (火) 00時00分

» 劇場鑑賞「ブリッジ・オブ・スパイ」 [日々“是”精進! ver.F]
信念を、持ち続ける… 詳細レビューはφ(.. ) http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201601090001/ ★トム・ハンクスのアップ!名優のオーラを感じよう!★【 数量限定グッズ 】インテリアに!DVD...価格:16,800円(税込、送料別) ... [続きを読む]

受信: 2016年1月26日 (火) 05時44分

» ブリッジ・オブ・スパイ [★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★]
【BRIDGE OF SPIES】 2016/01/08公開 アメリカ 142分監督:スティーヴン・スピルバーグ出演:トム・ハンクス、マーク・ライランス、エイミー・ライアン、アラン・アルダ Story:世界が戦争勃発の恐怖に怯える中、世界平和の鍵を握っていたのはひとりの普通の男だった。...... [続きを読む]

受信: 2016年1月26日 (火) 13時19分

» 映画『ブリッジ・オブ・スパイ』★スパイ劇でなく外交交渉した弁護士の人間ドラマ [**☆(yutake☆イヴのモノローグ)☆**]
作品について  http://cinema.pia.co.jp/title/168276/ ↑あらすじ・配役はこちらを参照ください。 監督:スティーヴン・スピルバーグ 脚本:ジョエル&イーサン・コーエン 主演:トム・ハンクス   ~ドノヴァン弁護士 冷戦下で、米ソそれぞれに捕まったスパイを交換した実話―― ということしか知ら..... [続きを読む]

受信: 2016年1月26日 (火) 19時15分

» ブリッジ・オブ・スパイ [映画的・絵画的・音楽的]
 『ブリッジ・オブ・スパイ』を吉祥寺オデヲンで見ました。 (1)今度のアカデミー賞作品賞の候補に挙げられている作品というので映画館に行ってきました。  本作(注1)の冒頭では、「1957年 冷戦の高まり。 米国とソ連は、互いに相手の核の能力と意図を怖れていて、...... [続きを読む]

受信: 2016年1月26日 (火) 21時47分

» ブリッジ・オブ・スパイ・・・・・評価額1750円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
その男、不屈につき。 スティーブン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演、コーエン兄弟が脚本と聞けば、映画ファンならこの面子だけでワクワクしてしまうだろう。 現代アメリカ映画界最高の才能たちが挑むのは、米ソ冷戦下の1957年から62年にかけて実際に起こった2つのスパイ事件と、その顛末を描く歴史秘話である。 保険訴訟の分野で、着実なキャリアを歩んできた弁護士のジェームズ・ドノヴァンは...... [続きを読む]

受信: 2016年1月26日 (火) 23時20分

» 「ブリッジ・オブ・スパイ」世界を救った男の物語。 [シネマ親父の“日々是妄言”]
[ブリッジ・オブ・スパイ] ブログ村キーワード  “監督 スティーヴン・スピルバーグ”“主演 トム・ハンクス”“脚本 イーサン&ジョエルのコーエン兄弟”。各部門でそれぞれ2度のアカデミー賞に輝く彼等が集結した、或る意味夢のような映画「ブリッジ・オブ・スパイ」(20世紀フォックス)。米ソ冷戦下に於ける世界戦争の危機回避を担ったごく普通の、しかし強い正義感を持った男の実話を基にした物語です。    アメリカとソビエトが冷戦状態にあった1957年。ニューヨーク在住のルドルフ・アベル(マーク・ライ... [続きを読む]

受信: 2016年1月27日 (水) 10時44分

» ブリッジ・オブ・スパイ [象のロケット]
米ソ冷戦時代の1957年。 アメリカ・ニューヨークでソ連のスパイと目されるルドルフ・アベルが、FBIに逮捕された。 アベルの国選弁護人として選ばれたのは、保険法のエキスパートである弁護士ジェームズ・ドノヴァン。 敵国の人間を弁護することは、家族にまで危険が及ぶ恐れがあったが、「どんな人間にも公平な裁判を受ける権利がある」として引き受けることに。 裁判から5年後、ドノヴァンに思わぬ任務が言い渡される…。 実話から生まれた政治ドラマ。... [続きを読む]

受信: 2016年1月29日 (金) 15時41分

» 無冠詞~『ブリッジ・オブ・スパイ』 [真紅のthinkingdays]
 BRIDGE OF SPIES  1957年、東西冷戦の時代。保険が専門の弁護士、ジェームズ・ドノヴァン (ト ム・ハンクス)は、ブルックリンで諜報活動に従事していたソ連のスパイ、ルドル フ・アベル(マーク・ライランス)の弁護を命じられる。  一人の民間人が、スパイの交換という国家間の最高機密における交渉人を 務めていたという、驚愕の実話の...... [続きを読む]

受信: 2016年2月 2日 (火) 08時27分

» 映画「ブリッジ・オブ・スパイ 」東ベルリンの無法地帯では、こちらも緊張マックス [soramove]
映画「ブリッジ・オブ・スパイ 」★★★★☆ ジェームズ・ドノバン: トム・ハンクス ルドルフ・アベル: マーク・ライランス ホフマン: スコット・シェパード メアリー・ドノバン: エイミー・ライアン ウルフガング・ヴォーゲル: セバスチャン・コッホ スティーヴン・スピルバーグ監督、 142分、2016年1月8日公開 2015,アメリカ,20世紀フォックス映画 (原題/原作:BRIDGE OF SPIES) <リンク:[続きを読む]

受信: 2016年2月 3日 (水) 22時36分

» 「ブリッジ・オブ・スパイ」 [ここなつ映画レビュー]
非常にきちんとした作品。更に言えば、トム・ハンクスの独壇場。きちんと真面目に職務を遂行する男。それがトム・ハンクス扮するジェームズ・ドノバンだ。ドノバンは、保険関係を担当している一介の弁護士だ。冒頭の日常業務の描写で、その後の出来事での彼の戦略を象徴する考え方が披露される。すなわち、2件の案件をそれぞれ独立した案件として処理するのではなく、まとめて1件とする考え方だ。これが後の「スパイ交換」の際に反映される考え方である。一介の弁護士ドノバンが、アメリカ合衆国内で捕まったソ連からのスパイの弁護をせざる... [続きを読む]

受信: 2016年2月 5日 (金) 17時43分

» ブリッジ・オブ・スパイ(ネタバレあり!) [必見!ミスターシネマの最新映画ネタバレ・批評レビュー!]
[ブリッジ・オブ・スパイ] ブログ村キーワード ↓ワンクリックの応援お願いします↓ おみくじ評価:大吉 2016年3本目です。 【あらすじ】 アメリカとソ連が冷戦下だった1950~60年代。 ソ連のスパイ・アベル(マーク・ライランス)の弁護人になったジェームズ・ド…... [続きを読む]

受信: 2016年2月 6日 (土) 03時06分

« 「ザ・ウォーク」:ぞわっとし、手に汗握る緊張感 | トップページ | U-23日本代表、リオ五輪出場を決める! »