「不屈の男 アンブロークン」:まずは観てみましょうよ
映画『不屈の男 アンブロークン』は「日本人を残虐な悪者に描いている」という変な抗議のために公開の目途が立たず、やっと小規模なアートシアター単館での公開となったいわくつきの作品。確かにシアター・イメージフォーラムのスクリーンにユニバーサルとレジェンダリー・ピクチャーズのオープニング・ロゴが出た時には、違和感たっぷりで妙な気がいたしました。 でも表現の自由の見地からも、とにかく公開されたのは喜ばしいことです。
ランナーとしての成長を描く部分は『炎のランナー』、戦闘機の件りは『永遠の0』、漂流部分は『白鯨との闘い』、収容所部分は『戦場にかける橋』や『戦場のメリー・クリスマス』を思わせます。ま、映画として極めて正統派なんですね。アンジェリーナ・ジョリー監督は、デビュー作『最愛の大地』の方が作家性を打ち出しておりました。本作はいわば「ハリウッド的」なのです。
それにしてもこの程度で「公開すべからず」だなんて、社会が不寛容で懐が狭くなっちゃってますよね。ネットで誰でも大声で物が言えるようになった弊害部分も大きいと思います。(公開前のことですから)作品を観もせずに情報だけでそう言っているわけですし。
昔から「国辱映画」は数々ありました。また、これでダメと言うのなら、『戦場にかける橋』や『戦メリ』だってダメになってしまうのではありませんか? そう考えれば、バカな話だとわかります。 それよりもツッコミ所は、鬼の収容所長を演じたMIYAVIの細く整えた眉毛や軽くメイクした感じの顔。『戦メリ』の坂本龍一といいMIYAVIといい、同じような役どころで化粧顔のミュージシャンを起用するって・・・へんなの。
(以降少々ネタバレあり) MIYAVIが最後に怪力主人公の気合に気圧(けお)されて、おたおたうろたえるシーンが説得力なかったなあ。あれで人間の気高さに打たれて自分は負けたとか思うような奴じゃないでしょ、あいつは。坂本がボウイにキスされてうろたえてたのは理解できますけど、こっちはちょっとね。
てなところを含めて、単純に作品の出来として今一つなのでした。 でもこれを観ることで「自由」に1票を投じることは大事だと思います。意思表示の方法として、まずは観てみましょうよ。
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