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2016年2月12日 (金)

「サウルの息子」:見えないものを見よ

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映画『サウルの息子』は、新視点かつ生々しいことこの上ないアウシュビッツ映画。ハンガリーの新鋭ネメシュ・ラースロー監督作品です。

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1:1.33のスタンダードサイズの画面です。そこに持ってきて、キャメラは常に主人公サウルに密着していて(主に背後から)、一人称に近い効果を生んでいます。一方で、スタンダードサイズの狭い画角の真ん中を後姿が隠してしまうので、背後の事物が隠れてしまって、よく見えません。逆に言えば、そうして死体にしろ何にしろはっきり見せないところが狙いなのでしょうね。キャメラが動きながらの地獄巡りということで言えば、昨年公開された『神々のたそがれ』にも似ているかも知れません。

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「見えないことで、想像させる」効果もありますよね。ホロコーストの惨劇を体験として想像させる映像。そして終始暗鬱で、感情を失ったようなサウルの顔により、戦争の悲惨と狂気を表そうとする試み。

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こんな苛酷な状況下では、誰だって正気を保てなくなるでしょう。いつ殺されてもおかしくない、そんな中を右往左往するサウルを見続けるのは正直辛いところがあります。しかし彼の身体越しに、見えないホロコースト、見えない悪の本質を見よ、という明確なメッセージを伝えている作品でもあるのです。

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