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2016年3月11日 (金)

「エターナル チカマツ」:やはり素敵なふかっちゃん

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渋谷Bunkamuraのシアター・コクーンで、『エターナル チカマツ』を観ました。近松の『心中天網島』にインスパイアされた作・谷賢一、演出・でデヴィッド・ルヴォーの芝居。深津絵里、中村七之助の共演です。やっぱり年に一度ぐらいはふかっちゃんの芝居を見ないとね。

映像の定式幕が開かれると、リーマン・ショックのニュース映像からという意表を突いたオープニング。そこに現れる娼婦役の深津さんから始まるドラマです。ここで、甘ったるいぶりっ子声を出すあたり、声の魅力のふかっちゃんの本領ですね。

そして時空を超越して登場する七之助さんは最終盤まで女形の芝居で女形の発声。さすがです。 他には中嶋しゅうさんが堂々たる芝居でしたねえ(この人、映画『日本のいちばん長い日』の東条英機役で括目しました)。

とにかく舞台演出が見事で、舞台装置の使い方だとか、照明の効果なども含めて「演劇の力」を感じさせるもんでした。とりわけ、第1幕の最後、心中の場面は黒い背景が真っ赤に転換して、そこに花びらが舞い降るという、歌舞伎的というか鈴木清順的というか、鮮烈なクライマックスがあり、ここには胸打ち震えました。鮮やかな演出に感動しました。ここに限らず、「赤」が効いてました。

現代の部分を含め、近松的な良さをたっぷり出した前半に較べると、後半は今一つだったかなあ。伊藤歩の関西弁が不安定なイントネーションだったし。ラストも、いいんだけど、まあ無難にまとめましたって感じだったし。 でも、全体を通して舞台の魅力をしっかり見せてくれる上等の出来でした。 

いつもながらカーテンコールで、ステージを演じ切った充実感を湛えた真摯な顔つきで上体をぐっと折り曲げてご挨拶する(ちびっこの)深津絵里さんは素敵でした。先ごろ『キネマ旬報』の主演女優賞に輝いたように、今、脂が乗り切った名女優なのです。

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