「リップヴァンウィンクルの花嫁」:まさに岩井俊二的傑作

『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、岩井俊二が国内で撮った長編実写映画としては、『花とアリス』以来12年ぶりなんですと! で、久々の岩井俊二は、やっぱり岩井俊二でした。篠田昇撮影監督が亡くなっても、あの独特の清潔な映像は健在でした(本作の撮影=神戸千木)。ああ、脂の乗り切った年代の岩井俊二が「かくも長き不在」だったことは、日本映画界にとって大きな損失でした。
それにしてもこれ、冒頭に東映マークが出るんですよ! そのミスマッチ(ユーロスペースで鑑賞したので、ますますもってミスマッチ!)たるや。

上映時間3時間! でも全く飽きませんし、素敵な3時間です。まぎれもない傑作です。気持ちの良い映像を観ながら、黒木華の受難と成長を目で追っていることが、そのか弱い声を聞いていることがなぜか至福だという、近来稀な映画体験ができるのです。
『リリィ・シュシュのすべて』『花とアリス』で蒼井優を使った岩井俊二が、空白期間を挟んで主役に据えたのが、蒼井と同系統の顔である黒木だというのが興味深いですね。実際、黒木とCoccoが楽しく交流するシーンは、あたかも『花とアリス』の蒼井と鈴木杏の大人バージョンのようでした。 でも黒木華って、昨年の3作品(『幕が上がる』『ソロモンの偽証』『母と暮せば』)といい本作といい、先生役ばっかりですね。似合うけど。
一方で、綾野剛の正体不明の影をはらんだ軽みも、見事でした。 そして、終盤に場面をかっさらう りりィ!(まさに「りりィのすべて」か? いや、岩井作品だから「シュシュ」が入るか?) 本年度助演女優賞の有力候補でしょう。
それはそうと重要なカギとなる毒貝が、『シェル・コレクター』で目にしたばかりだったイモガイだというのは、どういう偶然なんでしょうか?
結局、迷宮をさまよった少女(というよりは、「若い女性」なのでしょうが)の成長物語になっているところが、いかにも岩井さんです。
エンドロール冒頭のイメージカットで、紙製の「角つき角隠し」みたいなものをかぶっている華さんも、なんだかわからないけどサイコーでした(あれ、「ねこかんむり」って言って、グッズも出ているみたいですね。びっくり)。
帰りにユーロスペースの入口上部の壁面に、大きな大きな看板が入っているのに、これまたびっくり(あのロケーションで効果あるのかしらん?)。その右下には、岩井監督、黒木さん、Coccoさんのサインが入っていました。
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