「マジカル・ガール」:奇妙な味の純愛映画?
映画『マジカル・ガール』は不思議な作品。ジャンルが何なのやら、どう展開するのやら、どう着地するのやら、まったく読めません。シリアスなのかコメディなのか、サスペンスなのかホラーなのか、犯罪映画なのか恋愛映画なのか・・・そんなことすらわからないほどに、予測を裏切りながら進んで行くのです。うーん、「奇妙な味」です。
関係のない者たち同士が、ある偶然から結びついて、予想外の方向に転がって行くっていうストーリーに関しては、コーエン兄弟とかがやりそうです。でも、人間の闇を宿した奇妙な展開にはデイヴィッド・リンチを連想しますし、オフビートな不条理にはルイス・ブニュエルを、オタクっぽさにはクェンティン・タランティーノを思ったりもしちゃうのです。
この人間界、片方がハッピーになれば片方がアンハッピーに沈む・・・と、なかなかみんなオッケーな状態にはならないものですね。そういったあれこれを物語るにあたって、この監督は「皆まで言うな」とばかりに、描きません。直截に描写せずに、観客の想像力をフル動員させる手法。「余白」が大きな可能性を生んでいるのです。
(以降ややネタバレあり) それにしてもラストは不思議な感動を湛えています。何十年の時を越えたオープニングとラスト・シーンの呼応。時を貫く愛。もしかしたら究極の純愛映画かもと思わせるものがあります(かなりトリッキーな意匠ですが)。いずれにせよ、この「奇妙な味」は捨てがたいものがあります。印象的な「顔面包帯映画」としても、『透明人間』『他人の顔』『殺し屋1』などと並ぶものがありました。
劇場デビュー作だというカルロス・ベルムト監督。ユニークな個性です。この名前は覚えておくべきでしょう。
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