内野聖陽と波瑠の『乳房』@俳優座劇場
六本木の俳優座劇場で、内野聖陽と波瑠のリーディング公演『ふたりものがたり 乳房 ~天上の花となった君へ~』(合津直枝演出)を観ました。ええ、もちろん波瑠さん目当てです。
これ、伊集院静の短編小説『乳房』が原作。それを全面的に生かしながら、二人芝居に適した台本を作り、二人とも本を手に持って読みながら演じるという趣向。ただし、あまり読んでいないというか、台詞は頭に入ってる感じ。少な目ながら動きもありますし、リーディングと言いつつも、かなり演劇に近い印象でした。
『乳房』は伊集院さんと夏目雅子との馴れ初めから死別までの日々を描いたお話で、小生も以前読んで感銘を受けた覚えがありますが、いやー、改めて文芸作品としての素晴らしさを確認しました。通俗であり、私小説的であるわけですが、実話に裏打ちされた強度があり、男と女の普遍性があり、照れくさい程のロマンティシズムもあります。
これまでも夏目雅子に似ていると言われ続けた波瑠さんが、夏目本人がモデルの役を演じる面白さ。透明感にあふれ、可愛いく、はかなく、見事にハマってました。舞台の波瑠さん、思った以上に巧かったです。モデルの出自も含め、そんなに巧い人ではない印象ですが、映画『BUNGO』の中の1篇『幸福の彼方』だとか『みなさん、さようなら』だとか、役がハマった時には素晴らしい魅力を発揮する女優なのです。この芝居では、中盤で『鬼龍院花子の生涯』の夏目雅子の名台詞「なめたらいかんぜよ!」を言う場面もありましたが、うーん、ちょっとやり過ぎの脚色ではないかなあ。気恥ずかしいです。波瑠さんも、ちょっとドスが利かなかったし・・・。
内野さんは堂々と無頼派の「いい男」(伊集院さん)を演じて、さすがの安定感。大人の余裕ですね。内野さんといえば、小生にとっては森田芳光の『(ハル)』の人。おお、ここで波瑠と結びつきましたね!
舞台セットもシンプル。衣装もシンプル。かなりの部分は「本を読む」行為同様、観客の想像力に委ねられるというところが、「リーディング公演」なのですね。 正味1時間40分ほどの上演でした(休憩なし)。
終盤はやはり泣けてしまいますね。美しいラブストーリーでもあります。でも本作のテーマ曲のように繰り返し使われる矢沢永吉の『時間よ止まれ』が高鳴るエンディングにはムムム・・・。やっぱりヘンですよぉ。どうしてそうなっちゃうのか疑問でした(「時間よ止まれ」と言いたい気持ちだったってのはわかりますが、ベタですし、この曲が強すぎますし・・・)。
まあいずれにしても、「ナマ波瑠」(生春巻みたいですね)はステキでありました!
| 固定リンク
コメント