「ディストラクション・ベイビーズ」:時代を写した問題作ですが・・・
映画『ディストラクション・ベイビーズ』は、なかなかの問題作として位置づけられるでしょう。主人公の理由なき暴力、理由なき自己破壊。彼の存在に、そして彼をめぐる人々に、現代が匂います。でも小生は、ちょっとあきれちゃった口ですけどね。
とにかくキャスティングが成功してます。主人公は、今の日本では柳楽優弥意外に考えらえません。この得体の知れない、言葉なんか通用しそうにない、リアルなヤバさ。 ああ、『誰も知らない』のシュッとした少年が、なんでこんな怪人になってしまったのでしょうか?と思いますよね。
菅田将暉はいつもながらのチャラい役、を飛び越えてむしろ「ゲスの極み男」。本人とどこまで近いんだか遠いんだかわかりませんが、こういうアタマ悪いサイテー男の役やらせたら日本映画史上ナンバーワン役者でしょう。 (以降ネタバレあり)ブチ切れた小松菜奈の怒りがこいつに向かった時、正直「いいぞ!やっちまえ!」って思いましたもん。この時の小松菜奈の逆上演技は、振り切ってて見事でした。
ただ、本作において肝心の「殴り」に今一つ迫力がないような気がしたのは、小生だけでしょうか?引きの絵が多いからかなあ。 殴る音も「カツン」とか「カポン」とかって感じで(それがリアルなのかも知れませんが)、 普通映画やTVで用いる効果音の方が重厚で迫力があるのです。
何一つまとめないラストを含め、既成の映画的常識をできるだけ破壊(ディストラクション)しようとしているのでしょうけれど、うーん、それが作品のパワーを「カルト」止まりにしている気もいたしました。 たとえば『青春の殺人者』の地点にまでは、遠く及ばないと思うのです。
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