「さざなみ」:まあ、怖いですねー
映画『さざなみ』は、なんともじわーっと怖い映画。淀川長治さんだったら、「まあー何とも知れんこの老夫婦の心の奥底の描き方」とか「怖いねえ」とか言いそうですね。 確かに長年夫婦業やってる人たちにとっては(特に男性には)ホラーですよね、これ。夫婦は結局他人なんだけども、愛が介在するので、愛があるからこそのめんどくささを抱えているって話。
シャーロット・ランプリングもトム・コートネイもさすがとしか言いようがないので、よけいにじわりとホラーが迫ります。台詞の行間や描かれていることの裏側を、心の奥の感情の動きを、ニュアンスとしてきっちりと観る者にわからせる芝居。いやー、見事です。
『さざなみ』っていう邦題にしてから、巧みに内容を語っております。ランプリングの無表情の下にさざなみが立っている、その様子を見事に表した日本語タイトルです。で、原題はというと“45 Years”なんですよね。これはこれで年月の重みとその長さゆえの恐怖をずっしり伝える良いタイトルなんですけどね。
(以降ネタバレあり) ラストのパーティーで妻への愛と感謝を伝える見事なスピーチを口にする夫(ありゃあ日本の男では、照れてちょっと言えませんよね)。でも、その時、その後のランプリングの表情は・・・。こわいですねー。重いですねー。何とも救われないラスト。 どうにも好きになれない映画です。
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