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2016年6月12日 (日)

「海よりもまだ深く」:円熟の人間喜劇

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映画『海よりもまだ深く』は、『海街diary』に続いて、素晴らしい出来。『そして父になる』も含めて、是枝裕和の絶頂期と言っていいのでしょう。しかも3作とも見事なホームドラマです。

ですけれど、本作はコメディ要素が一番色濃く出ております。真面目だったり、不真面目だったり、飄々としていたり、そんな人々からにじみ出てくるおかしみの人間喜劇。

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なかなかこういう地味な映画を作りにくい時代なのに、しかもTV局が制作してる映画なのに、これだけのクォリティのものを創り上げて、評価と共にある程度の観客数もきっちり取る是枝監督は、やっぱり凄いと思います。全てのシーンが面白いし、そくそくとした情感が湛えられてますもん。

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阿部寛も真木よう子も樹木希林も息子役の吉澤太陽も、みんな圧倒的に素晴らしくて、わくわくしちゃいます。脇の小林聡美や池松壮亮やリリー・フランキーや中村ゆりも、いつも通り素晴らしいし。やはり、是枝作品の俳優たちは、見事に輝きますね。その上、真木さんにしても中村さんにしても、他の作品では見せない顔を見せてまして(やってることは普通なんですけど)、それが抜群に魅力的。映画の中で高橋和也が真木よう子見たさに居残ろうとする気持ち、リアルにわかりますねえ。

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多くの登場人物が「アレして」「アレする」的な言い方をやけに多用しておりました。かと思えば人生訓的な名台詞(これを樹木さんが言うと、嫌味が無いのです)もありますし、この「小さな話」に普遍性を持たせる技は、脚本(こちらも是枝さんのオリジナル)も演出もまさに名人芸の領域なのでありました。 好きです、こういう映画。

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コメント

確かに円熟期かも。ベースに(アレして)等往年の邦画の佳さ、例えば成瀬巳喜男監督作品みたいに日常生活を淡々と追って行くスタイルがあるんでしょうけどー。インタビューを聴くと小津安二郎監督との比較には是枝裕和監督本人が戸惑って居ましたが、初期の小津監督のサイレント映画のもつコミカルさは併せ持って居ますね♪

投稿: PineWood | 2016年6月13日 (月) 07時01分

PineWoodさん、コメントありがとうございます。
「幻の光」とか「ワンダフルライフ」とか初期の是枝作品からは、こういう作家になって行くことが想像できませんでしたね。
いろいろアレして、良い年を重ねたってことですよね。

投稿: 大江戸時夫 | 2016年6月13日 (月) 21時46分

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