「ヘイル、シーザー!」:映画趣味が暴走する失敗作

映画『ヘイル、シーザー!』は、コーエン兄弟が“やっちまった”失敗作。映画好きな人が、映画への愛を題材に、映画や映画館が題材の映画を作ると、結構な確率で失敗する--その見本みたいな映画になってしまいました(その点、トリュフォーは偉かったなあ)。映画館でも、終映後に明らかに期待外れだったという白けた空気が観客から漂っておりました。コーエン兄弟としては、『レディ・キラーズ』に並ぶ“やっちまった”作品でしょう。

ハリウッド黄金時代の映画へのオマージュなんでしょうけれど、今観ると、「で?」って感じ。水中レビューや水兵ダンスや史劇や西部劇や探偵ものの中の1場面だけ再現してくれても、特段の感興は湧きませんよねえ。

出演スターたちも(ジョシュ・ブローリン以外は)ちょこっとずつの登場で、まあ「顔見世興行」ですね。こういう贅沢ができる監督が、この世に3人(4人だけど)います。ウディ・アレンとスコセッシとコーエン兄弟です。今回は、スカーレット・ヨハンソン、レイフ・ファインズあたりが良くって、誘拐されたジョージ・クルーニーは、ちょっと情けな過ぎて精彩を欠きました(こんなクルーニー、見たくない)。

『シリアスマン』『トゥルーグリット』『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』と、近作は大江戸好みだったコーエン兄弟ですが、3年ぶりのこの新作は、ちょっと擁護できませんねえ。趣味に走り過ぎると、ろくなことは無いようで・・・。
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