「ペレ 伝説の誕生」:ブラジルサッカー万歳!の娯楽映画
映画『ペレ 伝説の誕生』は、意外なほど小規模な公開だったのに驚きましたが、日本ではこんなものなんでしょうかねえ。祝日の場内は、小学生の男の子と両親だとか、中学生の男の子同士だとか、そういった観客がかなり目立ちました(女性率低し)。
で、映画はそんな観客層にもフィットしそうな明瞭なサクセス・ストーリー。苦難からの成功あり、親子の愛あり、試合の興奮あり、感動ありと、サッカー好きにもそうでない人にもおすすめできる娯楽映画に仕上がってました。
貧しい少年時代から時系列で、1958年のワールドカップ優勝までを描く正攻法です。冒頭の子供たちのリフティング遊びから、物事を効果的に見せる正確なカットを小気味良い編集でつなぎ合わせて、見る喜びを味あわせてくれます。つまり、腕のあるプロの仕事です。映画は最後までテンポ良く、飽きさせることなく進行します。
試合の場面は正直言って「まあまあ」の描写なのですが、他のサッカー映画に較べてプレイヤーズ・レベル、ピッチ・レベルのカメラ位置が多かったですね。役者たちもサッカーの妙技を披露しなければならないわけですが、そこはさすがにブラジルというしかありません。お見事でした。
本作はブラジル・サッカーの原点にして永遠のスピリットである「ジンガ」の喜びに満ちておりました。ヨーロッパのサッカーの方を好む大江戸ではありますが、こういうの見るとやはり、代表ってのはその国に根差した、その国ならではのサッカーで戦うべきだよなあと思わざるを得ません。イビツァ・オシムさんが日本代表監督に就任した際に掲げた「代表のサッカーの日本化を推進する」ってやつも同じことです。だから小生は今もなお、2010年W杯を闘うオシム・ジャパンを見られなかったことが残念でならないのです。
ブラジルの選手たちがW杯期間中の滞在ホテルで、リフティング遊びで「ジンガ」の活力を取り戻す素敵なシーンに、ペレ氏がカメオ出演しておりまして、場内も「おお!」ってどよめいたのでありました。
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