「葛城事件」:家族と言う地獄
映画『葛城事件』は、実にいやーな雰囲気が終始続く作品。広告コピーにもある「家族と言う地獄」ってフレーズが、ものの見事に当てはまる震撼すべき作品です。これ見てると、本当に家族って一番たちの悪い地獄に化すものなんだよなあと思えて来て、戦慄します。
この三浦友和の父親のイタさが全ての元凶となっているあたりを解き明かしていく、一つひとつの描写の積み重ねが、本作のキモです。この人の弱さとか見栄とか自分以外全部ゴミってところとか・・・。でも今でも昔でも、こういうモンスターって存在するんですよね。その存在が周囲の人々を蝕んでいくあたり、説得力がある怖さです。長男(新井浩文)の悲劇なんて、まさにこの父親の「見栄」が遺伝したから起こったものですもん。
三浦友和の父親は狂気を表に出さないのですが、その一方で母親(南果歩)も、次男も、長男も、明らかに「壊れて」行くのです。そして死刑反対活動家の田中麗奈の無意識の偽善と予想外のぶっ壊れ方も、ぞくっとする凄味があります。いやー、赤堀雅秋監督、底意地が悪いです。
最初から最後まで家族がそれぞれいろんなものを食べています。でも、それがコンビニのナポリタンだったり弁当だったりカップラーメンだったり・・・と、ことごとく手作りの料理ではありません。描写もまずそうです。わかりやすく、家族の基礎である食事と言う行為が崩壊しています。 そして、差し入れの甘い菓子を拒否し、最期の時に炭酸飲料の刺激を所望する次男。そこにも、大切な何かが壊れた救いの無さが表出していて、暗澹たる気分になるのです。
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