「ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years」:偉大なバンドのツアー時代
映画『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years』は、本編109分+シェイ・スタジアムのライブ映像31分という上映形式(上映前に出る字幕に、映画館のみの特典とか書いてありました)。もっともこのライブは’80年代に『THE BEATLES シェアスタジアム』という題名で、『マジカル・ミステリー・ツアー』との2本立てで、丸の内松竹で公開されています(そちらの作品は44分)。てなわけで、たっぷり楽しめるって趣向です。
本編は監督がロン・ハワードです。しっかりと一流を据えました。なので、ぬかりがありません。ビートルズの「ツアー時代」に的を絞って描き、テンポ良く、引き締まったドキュメンタリーです。
小生実は大のビートルマニアなのですが、考えてみればこういうちゃんとしたビートルズ映画の新作ってのは、『レット・イット・ビー』('70)以来なんですもんね。ちょっと驚きます。しかも描かれた日々から半世紀以上を経て、現在のポールとリンゴが出演しているのですから。
とにかく音が良くなっていてびっくり。これまで目にした(耳にした)初期のビートルズ映像って-特にライブの場合-音が平板かつ分離が悪く、歓声にかき消されて、それはひどいものでした。ところが本作では、それぞれの楽器が分離良くソリッドに聴こえるし、ヴォーカルもくっきり。歓声、嬌声はあるのだけど、音楽がきっちり聴こえるという見事な仕事。更には、現代のシネコンの音響設備(ちなみにTOHOシネマズ六本木ヒルズで観ました)の良さによって、ここまでのクォリティで耳に届くようになりました。 それにしても当時はPAシステムが無かったので、シェイ・スタジアムで演奏するのに、学芸会みたいなアンプセットしかなくて(演奏者用のモニターもない)、ビートルズ自身も聴こえなかったそうですが、お客さんほとんど聴こえませんよねえ。あのキャーキャー!だし、野球場だから上は全部開いてるし。場内放送用のスピーカーとかも使っていたのかしらん?
映画のフッテージや日本公演の様子も入っているし、初公開映像も多いそうで、満足度高し。まあ描かれていることは、ファンなら知っていることばかりではありあましたけどね(でも、“ブッチャー・カヴァー”なんて、今でもインパクトありますねえ。いや、今だからか?)。
ゲスト・インタビュイーもエルヴィス・コステロとかウーピー・ゴールドバーグとかシガニー・ウィーヴァー(また! 『ファインディング・ドリー』や『ゴーストバスターズ』と合わせて、ここのところシガニー祭りです)とか、豪華な面々。 我らが浅井慎平先生もいらっしゃいましたが、久々に見て驚いたのが(というか名前を聞くことすら相当久しぶり)、リチャード・レスター監督! おお、生きてたのかぁ。調べたら84歳でした。『A HARD DAYS NIGHT』を撮った32歳の頃から今と同じぐらいハゲてたから、なんだかよくわからないや。
アメリカ南部のツアーで人種分離に反対を表明して、ブレイクスルーを果たしたエピソードは感動的でした。こうしてみると、野球場コンサートをはじめとして、今は普通に行われているけど初めてやったのはビートルズだったことって、多いですよね。やっぱりその偉大さを再認識せずにはいられない作品でありました。
この作品のプログラムって、LPレコードのような紙ジャケットに入っているのです。凝ってます。ま、26cm四方ぐらいなので、LPよりもだいぶ小さいんですけどね。
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