« 湘南、裏天王山で痛い敗戦、10連敗 | トップページ | 「BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」:進撃しない巨人 »

2016年9月18日 (日)

「怒り」:高密度重量級力作

356389_003
映画『怒り』は、本年度ベストテン上位を争うであろうヘヴィーな力作。2時間22分が4時間ほどにも感じられる密度の濃さで、圧倒されます。

3つの物語が互い違いに語られて進行します。観ている者としては、この3つの物語とそれぞれの登場人物がどういう形で結びついていくのだろうかと考えるのですが・・・。

356389_002

(以降ネタバレあり) ところがなかなか交わらないのです。そして、後半で佳境に突入した時に、「もしかして、時間軸をずらしてあって、あの人とあの人とこの人って、ひょっとして同一人物なの??」という衝撃の誤解を誘うようなミスリード演出もあって、勝手にドキドキしちゃったのですが、そうではありませんでした。それだと映画の語り口やトリックだけの問題になってしまいますが、本作はそれよりも深く重く、現代と、人間と、対峙していきます。その硬質な重量感は、まさに李相日監督作品です。

356389_005

役者たちがいくら褒めても良いぐらい、みんな凄過ぎます。中でも宮﨑あおいの、ちょっとバカっぽく演じた感じと、あの慟哭には感嘆を禁じ得ません。30代前半の部では、満島ひかりと並んで一番の名女優であると再確認しました。本作の撮影のために体重を7kg増やしたってことでしたけど、そんなに太ってるようには見えませんでした(まあ、もっさりした空気感をまとったというところでしょう)。

そして、「あれ? 出てたんだ?」って感じに現れた高畑充希にも瞠目させられました。そして『とと姉ちゃん』を見てるうちに忘れかけていた、彼女はとんでもなく演技がうまい人だっていう事実を思い出したのでありました。

356389_001

役者の力、演出(&脚本)の力に加えて、撮影(笠松則通)も素晴らしいですね。特に、あの沖縄の海と空の色! そして坂本龍一の(らしい、そして素晴らしい)音楽! 更には、犯人の手配写真やビデオ画像を造ったスタッフの技(微妙に、あの人にもあの人にも見える)にも拍手です。

『シン・ゴジラ』『君の名は。』同様、市川南プロデューサーの名前が。というより、『君の名は。』同様に川村元気プロデューサーがキーとなっているのでしょう。ノッている方々です。興行成績のみならず、作品クォリティの高さが嬉しいではありませんか(川村氏が原作も務めた『世界から猫が消えたなら』に関しては、ちょっとアレでしたが・・・)。

|

« 湘南、裏天王山で痛い敗戦、10連敗 | トップページ | 「BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」:進撃しない巨人 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「怒り」:高密度重量級力作:

» 「怒り」情報を知って疑念を抱いた先にみた情報を信じ込む先に潜む真実から遠ざける疑念の先にみる真実を知って後悔の念に駆られる怒り [オールマイティにコメンテート]
「怒り」は八王子で起きた凄惨な殺人事件から3つのストーリーが展開し、その事件によって翻弄される3つストーリーの登場人物たちが翻弄されていく事になるストーリーである。1 ... [続きを読む]

受信: 2016年9月18日 (日) 23時53分

» 劇場鑑賞「怒り」 [日々“是”精進! ver.F]
“信じる”ということ… 詳細レビューはφ(.. ) http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201609180000/ 「怒り」オリジナル・サウンドトラック [ 坂本龍一 ] [続きを読む]

受信: 2016年9月19日 (月) 05時50分

» 『怒り』 [こねたみっくす]
彷徨い続けるこの怒りをどこへ向ければいいのだろうか。 2007年に起きたリンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件を基軸に、感情の中でもっともエネルギーを要する「怒り」に焦点を当 ... [続きを読む]

受信: 2016年9月19日 (月) 13時33分

» 怒り ★★★★ [パピとママ映画のblog]
「悪人」の李相日監督が再び吉田修一の小説を原作に、実力派俳優陣の豪華共演で贈るヒューマン・ミステリー・サスペンス。残忍な殺人事件が発生し、犯人が逃亡して1年後、千葉・東京・沖縄に現われた前歴不詳の若い男3人が、やがてその土地で新たな愛を育んでいく中、真...... [続きを読む]

受信: 2016年9月19日 (月) 15時58分

» 怒り [我想一個人映画美的女人blog]
「悪人」(10)の原作・吉田修一✖︎李相日(り・さんいる)監督再びタッグ。 「悪人」はそんなに好きじゃなかったけど、気になってたので初日に鑑賞。 随分とまた豪華キャスト揃えたなーと思ってたら 配役には「映画 『オーシャンズ11』のようなオールスターキ...... [続きを読む]

受信: 2016年9月19日 (月) 23時12分

» 怒り [映画好きパパの鑑賞日記]
 愛とは人を信じることとは何かを問う内容といい豪華出演者の素晴らしい演技といい、さまざまな意味で、今年一番、重い映画でした。李相日監督は現在の日本で最も重たい映画を楽しめる監督だと思います。  作品情報 2016年日本映画 監督:李相日 出演:渡辺謙、森山…... [続きを読む]

受信: 2016年9月20日 (火) 07時15分

» 怒り [Akira's VOICE]
しんどい。 人間ってしんどいよ。(´;ω;`)ブワッ だが希望はある!(´・ω・)キリッ [続きを読む]

受信: 2016年9月20日 (火) 10時53分

» 怒り [★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★]
2016/09/17公開 日本 PG12 141分監督:李相日出演:渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、佐久本宝 、ピエール瀧、三浦貴大、高畑充希、原日出子、池脇千鶴、宮崎あおい、妻夫木聡 あなたは殺人犯ですか? STORY:八王子で残忍な夫婦殺人事件が起こるが、犯人の行方は杳として知れず、整形して日本のどこかで一般の市民に紛れて逃亡生活を送っていると見られていた。事件から1年後、千葉・東京・沖縄に素性の知れない3人の青年が現われる。歌舞伎町の風俗店で働いているところを発見され、千... [続きを読む]

受信: 2016年9月20日 (火) 15時46分

» 怒り〜沖縄問題とLGBTごった煮されても [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。吉田修一原作、李相日監督、坂本龍一音楽。渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、宮崎あおい、妻夫木聡、綾野剛、広瀬すず、佐久本宝、ピエール瀧、三浦貴大、高畑充希、 ... [続きを読む]

受信: 2016年9月20日 (火) 18時24分

» 怒り [象のロケット]
ある夏の暑い日に、八王子で夫婦殺人事件が発生。 犯人は顔を整形をして逃亡したと見られていた。 …その後、各地に素性の知れない男が現れる。 千葉の漁港で働く田代、東京で男と暮らす直人、沖縄の無人島に居ついたバックパッカー田中。 彼ら3人はいずれも、警察の手配写真に顔が似ていた…。 ミステリー。... [続きを読む]

受信: 2016年9月21日 (水) 12時04分

» 『怒り』('16初鑑賞88・劇場) [みはいる・BのB]
☆☆☆☆☆ (10段階評価で 10) 9月17日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター9にて 15:35の回を鑑賞。 [続きを読む]

受信: 2016年9月23日 (金) 16時38分

» 怒り ★★★*☆ [センタのダイアリー]
整形して逃亡した殺人犯の話を軸に3つのエピソードが語られる。 今の日本の主役級トップ俳優陣が集結しているだけあって出演者を見ているだけで引き込まれるが、3つのエピソードのつなぎ方がブツ切れで、せっかくの緊張感が消え、間延びしているように感じる。 俳優陣がオーバースペック? のせいか、逆に、演出や編集/脚本が追い付いていない気がする。 主役級ばかり集めてるだけあって、それぞ...... [続きを読む]

受信: 2016年9月23日 (金) 17時39分

» 映画「怒り」 [FREE TIME]
映画「怒り」を鑑賞しました。 [続きを読む]

受信: 2016年9月26日 (月) 22時56分

» 『怒り』 クールな小説とホットな映画 [Days of Books, Films]
『怒り』でいちばん見ごたえがあったのは、ずらりと揃えた主役級の役者が今まで見たこ [続きを読む]

受信: 2016年9月27日 (火) 13時46分

» 怒り [映画的・絵画的・音楽的]
 『怒り』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。 (1)同じ原作者の小説を同じ監督が手掛けた『悪人』(2010年)がなかなか良かったので、本作もと思い映画館に行ってきました。  本作(注1)の冒頭は、空中から見た街(八王子)の光景。蝉の声が高まる中、カメラは次第に一軒の家に近づきます。なんと、その家の浴室では人が殺されているのです。一体(女性)は、浴槽の中に、もう一体(男性)はその外に。その家に住む夫婦が殺されたようです。  八王子署の刑事が、血の付いた包丁を見つけ、またドア(注2)に書かれた「怒」... [続きを読む]

受信: 2016年9月30日 (金) 21時07分

» 映画「怒り」 感想と採点 ※ネタバレなし [ディレクターの目線blog@FC2]
映画 『怒り』(公式)を先日、TOHOシネマズ試写会にて鑑賞。採点は、★★★☆☆(最高5つ星で3つ)。100点満点なら65点にします。なお、原作:吉田修一氏小説『怒り』は未読。 ざっくりストーリー 猛暑の夏のある日、東京・八王子で残忍な手口の夫婦殺害事件が起こる。犯人は現場の壁に「怒」の血文字を残し、顔を整形して逃亡した。一年後、素性のわからない風...... [続きを読む]

受信: 2016年10月 1日 (土) 05時22分

» 「怒り」 [お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法]
2016年・日本 配給:東宝 監督:李 相日原作:吉田修一脚本:李 相日製作:市川 南企画・プロデュース:川村元気撮影:笠松則通 吉田修一の原作を映画化した群像ミステリードラマ。同じ吉田原作「悪人」で... [続きを読む]

受信: 2016年10月 3日 (月) 21時33分

» 怒り  監督/李相日 [西京極 紫の館]
【出演】  渡辺 謙  宮﨑 あおい  松山 ケンイチ  妻夫木 聡  綾野 剛  森山 未來  広瀬 すず 【ストーリー】 八王子で起きた凄惨な殺人事件の現場には「怒」の血文字が残され、事件から1年が経過しても未解決のままだった。洋平と娘の愛子が暮らす千葉の漁港で田...... [続きを読む]

受信: 2016年10月 6日 (木) 22時12分

« 湘南、裏天王山で痛い敗戦、10連敗 | トップページ | 「BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」:進撃しない巨人 »