「溺れるナイフ」:俺様と姫の中途半端な神話
映画『溺れるナイフ』は、期待の新鋭・山戸結希監督の商業映画デビュー作。確かに個性のきらめきを感じさせつつ、少女マンガ原作のエンタテインメントとしても一応成立させています。でも、そんなに好きな作品とは言えないかなあ。
本作の小松菜奈と菅田将暉を輝いていると見るかナマクラと見るかで、作品評価は大きく違ってくるでしょうね。大江戸は後者だったので、なんだかイマイチでした。この二人だったら、『ディストラクション・ベイビーズ』の方がそれぞれ良いと思ったのが小生なのです。まあ、金髪の菅田くんのアルビノ的な白さや細さはあたかも妖精のようで、なかなか得難い個性だというのはわかりますが、この人あまり好きじゃないもんで。しかも、この主人公の俺様キャラ(神様キャラ?)もキライなので・・・。 一方、お姫様キャラ的な小松さんにしても、『渇き。』の得体の知れない神秘感に較べると、なんだか「作った」芝居でねえ・・・。ナレーションなどのエロキューションも素人っぽいですし。
重岡大毅の大友君は、少女マンガ定番の「いいやつキャラ」。ホントにハートのある、いいやつなんです。でも主人公女子は、結局だめんずである主人公男子の方に行ってしまうってのも、少女マンガの定番。困ったもんです。
上白石萌音のキャラも相当わからんやつです。原作マンガにはもっと丁寧に描かれているのかと思いますが、この映画を見た限りでは、変に思わせぶりなだけで、なんだか危ない人になっちゃってます。困ったもんです。
最近の山戸結希監督のインタビューやアンケートへの回答を『キネマ旬報』で読んだ時には、その知的でユニークな言語感覚に目を見張ったものですが、まあ作品の方は「そこそこ」に留まってしまったように思えます。どうせなら、もっと徹底的に「神話」を志向してくれた方が良かったのかも知れませんが・・・。でも、随所で見せるロングショットの長回しとかは、悪くなかったですよ(相米を持ち出したりはしませんけどね)。
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