「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」:芸術を生むためのバトル
映画『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』って、コリン・ファースやジュード・ロウやニコール・キッドマンが主演で、ローラ・リニーやガイ・ピアースまで出てるんですね。大江戸はほとんど前情報を入れずに観たので、観ながらこの豪華キャストを知ってびっくりでした。だって、そこらがあまりアピールされてないというか、そもそもの公開規模が小さ過ぎて・・・。世が世なら、(大きい劇場だった頃の)みゆき座あたりで公開した作品なんでしょうけど。
編集者パーキンズを演じるのがコリン・ファース。この人、職場のデスクだろうが自宅の食卓だろうが、常にソフト帽をかぶっています。なぜ室内で? カツラ代わり? へんなの。でも安定の演技を見せてくれます。
対する天才作家トマス・ウルフにはジュード・ロウ。こちらはヅラをかぶっています。で、このウルフ氏が相当な人格破綻者なもんですから、もう見ていてイヤになります。まあ古典的な天才的作家像って感じではありますが、友達にも仕事仲間にもなりたくないタイプの男です。
トマス・ウルフって昔、名前は知っていましたが作品は読んだことがありませんでした(今では、日本国内では古本以外は入手できないのだとか)。こんな横暴で破滅的で、実際ある意味破滅しちゃった人だったのですね。
1930年代アメリカの風景や衣装や美術の再現がしっかりしていますが、これイギリス映画で、監督がイギリス人なら主役二人もイギリス人なのです。ソフト帽とロングコートの男たちの時代を、スタイリッシュに描き出します。光と影の渋い映像に、品格があります。
芸術を生み、世に問うための苦闘(バトル)の物語--嫌いではありませんです。
そして時折、作家と編集者、この男二人の関係にホモ・セクシャルが匂い立ちます。淀川さんなら何と評したことでしょうか。
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