「ジュリエッタ」:ヴィヴィッドで美しい色、色、色
映画『ジュリエッタ』は、ペドロ・アルモドバルの新作。小生は若き異才としてもてはやされた頃のアルモドバルよりも、ここ十年ぐらい、つまり『ボルベール 帰郷』('06)以降のアルモドバルが好きなので(『アイム・ソー・エキサイテッド!』は除く)、その流れで本作も大いに堪能できました。
「女の(ほぼ)一生」です。そして母と娘の物語でもあります。 二人の女優に一人の女性の人生の前半と後半を演じさせるというのがミソ。まあ、杉村春子じゃないんだから一人で一生を演じるわけには行きません。そういった意味では極めて真っ当なのですが、なんだか奇策のようにも思えて来て、その最大のポイントは二人の女優のリレー・ポイント(結節点)。風呂から出た彼女が娘たちに頭からタオルをかぶせてもらって、そのタオルを開くと中から違う顔が現れるという手品のような趣向。 おお!でした。
いつも以上に圧倒的な色彩の乱舞。洋服の色、インテリアの色、自動車の色・・・どれもこれもヴィヴィッドで、キレイな色です。洋服の色のセンスといったら! なかなか普通には売っていないような色が多いんですよ。しかも周囲との関係で、見事に浮き立つような美しい色合い。ブラウスのライトグリーンやパープルが、自動車のカーディナルが、その他にもクリムゾンやらブルーやらが見事に画面を彩って、まったくもって眼福なのです。そして、19歳の誕生日用ケーキの赤!その美しいこと!
カラーのみならず、美術のセンスの良さもアルモドバルならでは。椅子やテーブルをはじめとするインテリア・デザインのセンス。バッグや靴や小物のセンス。ガウンの紐一つとっても、上質感をはっきり認識できます。さすがです。
序盤は少々かったるかったのですが、中盤以降ぐっと面白くなっていきました。ラストは拍子抜けするほどあっさりしておりますが、あれはあれでアリだと思っております。
往年のアルモドバル映画の常連、(鼻の)ロッシ・デ・パルマも家政婦役で出ております。まだ52歳なんですが、60過ぎに見えました。なかなか怖かったですよ。
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