「弁護人」:強度のある正義の物語
映画『弁護人』は、韓国の盧武鉉(ノ ムヒョン)元大統領の弁護士時代の実話を基にした、正義と勇気の物語。ソン・ガンホのワンマンショーでもあります。
1980年代が舞台ですが、その頃の韓国の時代臭がよく描けているのかどうかは、小生にはわかりません。ただ、多くの役者が明らかにヅラ頭になっているのはわかります。
韓国では1,100万人を動員する大ヒットとなったそうですが、こういう硬派な社会派ドラマ、正義の物語が広く受け入れられたってのは、かなりうらやましいことです。日本でこういう映画を作っても、かようなヒットというのは望むべくもないと思うのです。韓国って、『トガニ 幼き瞳の告発』とか本作とか、社会性の強い告発映画が結構受け入れられるお国柄のようで、そこらへんは立派だよなあと思うのです。
ただ、政治性、社会性を抜きにしても単純に面白い映画として成立しています。ジェームズ・スチュアートからトム・ハンクスに至るアメリカン・ヒーローが演じてきた役がソン・ガンホの役柄なのです。 そして「悪役」はとてつもなく悪くてふてぶてしくて、観る者の怒りに火をつけるのです。だからこそ、正義のヒーローが引き立つようにできているのです。主人公が最初から「正義」だったわけではなく、いいかげんな奴が突如目覚めて、めきめきと勇気あるヒーローになっていくあたりも、娯楽映画の典型パターンです。
かように「通俗」であり、洗練からは遠い作品ですが、通俗ならではの強度があります。そこらも韓国映画らしいところ。ソン・ガンホの好演が更に強度や広がりを増幅させていることは、言うまでもありません。
どの国においても、このような映画は作られ続けていくべきだと思うのです。世の中の理不尽や暴力へのプロテストとして。若い世代への啓蒙のため。そして映画人の熱い魂を示す上でも・・・。
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