「ミューズ・アカデミー」:アレン作品のシリアス版
映画『ミューズ・アカデミー』はあの美しく、素晴らしく、新しかった『シルビアのいる街で』のホセ・ルイス・ゲリン監督の新作。でもこれは異色と申しましょうか、ちょっと目ドキュメンタリーのような、でもフィクションっていう作品。映像のルックとしても、『シルビア』みたいに「明らかに美しい」わけではありません。もっと無造作に撮ってる感じ。
部屋や飲食店の窓越し、車のフロントグラス越しで、映り込みや反射があるようなショットも多いのが印象的。そこらへんが虚実の間(あわい)を感じさせてくれたりもします。全体的に、「知的な監督」だという印象を持ちました。でもちょっとヘンで、ちょっとおかしくもあります。
だって大学教授が恋愛論の講座を通して、複数の教え子たちといい仲になっちゃうような映画なので、もう少しコメディに寄せてったらウディ・アレン作品になりそうですもん。ってか、この教授を10年前のアレンが演じたとすると・・・ほーら、頭の中で自動的にアレン作品が展開して行くではありませんか(男の恋仇が必要ですけどね)。
終盤に至って、俄然面白くなってきます。クライマックスの正妻とガールフレンドがカフェで対峙する場面の怖さ--冷静なのでキャット・ファイトにならないが故のコワさときたら・・・。「あわわわわ・・・」ですね。この場面は、映画史に残るものだと思います。
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