日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト5作品
新宿の武蔵野館で昨年暮れから、日活の「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」5作品が連続公開されましたね。5人の監督は、現在の日本映画界のトップランナーたち。果たしてその成果は?
第1弾の『ジムノペディに乱れる』(行定勲監督)は、なんだか「古い」感覚。板尾創路演じる主人公のやさぐれ映画監督が「無頼派」で、奥田瑛二の『赤い玉、』の主人公とほぼ同じ造形。てなわけで、今回のプロジェクトが標榜した「女性目線」からは程遠い出来。あえて’70年代感覚を出そうとしているのでしょうが、どうにもこうにもハンパで物足りないのでした。
第2弾『風に濡れた女』(塩田明彦監督)は、ほとんどシュールな怪作。演劇の映画にして映画による演劇って感じですが、うーむ、笑えない・・・。こちらもあえて’70年代の感覚を出そうとしてますが、「これってパロディですかい?」って感じで、ちっとも迫りません。何なんすか、このぶっとびアクションは? そして5作品を通して言えることですが、肝腎の女優が弱いんですよねー。それじゃあダメじゃん。
でも第3弾『牝猫たち』(白石和彌監督)は面白かったですよー。池袋の風俗嬢たち3人を描きながら、現代に肉薄していきます。さすがは白石監督って感じのリアルなグイグイ感で、人間存在の不思議に迫ります。ダークサイドを描きながら人間の活力に満ち、しかも一抹の哀感さえ漂わせています。井原西鶴の世界ですね。やはり、こう来なくちゃいけません。性描写にも、唐突感がありません(そりゃそういう仕事の話なので、ナチュラルに溶け込んでいるのですよね)。
第4弾『アンチポルノ』(園子温監督)は、攻めてます! 鈴木清順もびっくりしそうなヴィヴィッドな原色の世界で繰り広げられる、夢か現(うつつ)かの白日夢。女優にしても元AKB48研究生の冨手麻妙の頑張りとか、50代半ばの筒井真理子さんの大奮闘とか、5作の中で一番充実していました。本作ほど現実と幻想が入り乱れる作品ってのも、かつて無かったほどですし、色彩感覚と映像の美しさも圧倒的。ラスト近くの絵の具ぶちまけシーンは、ジャクソン・ポロックを連想させたりもして、まさに芸術家&詩人としての園子温のパワーが炸裂した作品になっていました。
と尻上がりに良くなってきたかとおもいきや、最終第5弾『ホワイトリリー』(中田秀夫監督)でまたがっかり。なんかとっても古めかしい感覚で、女優も弱くって、ダイアローグから芝居から時として苦笑するしかないような場面もあって(昔の大映ドラマか何かかしらん?)、いやー、まいりました。
まあ結局は玉石混交なのでした。でも今年のベストテン級の園作品、白石作品を観られただけでも良しとせねばならないのでしょうね。でも「女性目線」って言うんだったら、やっぱり女性の監督を起用しなくっちゃ。
80分程度という上映時間もいいですね。ムダに長い映画反対!なのです。
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