「彼らが本気で編むときは、」:日本に必要な映画
映画『彼らが本気で編むときは、』は、そくそくと心に沁み入るようなビューティフルな作品。荻上直子監督の作品としては、これまでのオフビートまったり系から転じて、しっかりと物語を語っています。
トランスジェンダーの主人公を扱った初めてのメジャー日本映画なのではないでしょうか? 極めて真摯な姿勢で、でもクソ真面目に堕することなく、良質の映画となっています。適度のユーモアと、適度の感動(決して「泣かせ」には走りません)、そしてナチュラルな社会性(性同一性障害の他に、ネグレクトにも言及しています)。うーん、良いです。日本に必要だった映画です。
この物語の重要なポジションに小学生の女の子(トモ)を配したことが、奏功してます。観る者は彼女と一体化して、リンコさんを好きになってしまうのです。そして自分の中に多かれ少なかれ存在する偏見や特別扱いする心が、映画を観た後ではかなり是正されたことに気づくのではないでしょうか? 成熟した幸福な社会とは、少数派を排除しない社会なのだと思います。 そして対象がどうであろうと、人を愛することは素敵なことに違いありません。
本作の生田斗真は決して「名演」ではないような気がしますが、リンコさんの「人としての魅力」がじわっとにじみ出てくるところがさすがです。
毛糸で作ったリンコさんの「煩悩」が、あたかも往年の草間彌生のモチーフみたいでした。その数「108」のことを、トモが「消費税込み?」とか言うところがおかしかったなあ。
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