「ラ・ラ・ランド」:ラ・ラ・ラヴリー、チャ・チャ・チャーミング!

映画『ラ・ラ・ランド』をようやく観ました。上がり切ったハードルでしたが、一応クリア。大江戸的には、デイミアン・チャゼル監督の前作『セッション』の方に軍配を挙げますが、それでも素晴らしいし、称賛したい映画です。
往年のハリウッド・ミュージカルをリスペクトして、捧げまくるオマージュの数々。本当に今日びよくぞここまでやりました。そりゃあ、黄金期の名作たちと較べたら・・・ってところはあります。でもそれは酷ってもんで、むしろこの堂々たる再生のお手並みをきちんと評価してあげるべきでしょう。

オープニングの大渋滞ハイウェイでの長回しワンカットで、いきなり古典的ミュージカルの世界と原色ワールドに引き込まれます。この曲のエンディングで盛り上がって、そこに“LA LA LAND”とメインタイトルが出るあたりとか、もう拍手しちゃいそうでした。他の曲も「いかにも」なミュージカル・ナンバーで、これブロードウェイの劇場だったら、終わった時には万雷の拍手だろうなーって感じ。映画でここまでそういう感覚が出てるのって、なかなかありません(近年では『シカゴ』の“All That Jazz”の最後ぐらいか・・・)。
監督がこの世界を愛しているだけに、ミュージカル映画の撮り方がちゃんとわかっています。これも’70年代以降のミュージカルには珍しいところ。「踊っている全身を見せる(フルサイズ~セミロング・ショット)」、「カットを割らずにダンスを見せる」といった基本がしっかりできているのです。まあ分量的には、もう少し多くのミュージカル場面を見たかったですけどね。
アカデミー主演女優賞に輝いたエマ・ストーンには華と愛嬌があり、(歌と踊りは「そこそこ」でしたが)作品に合った味わいで健闘してました。

一方のライアン・ゴズリング(今、「牛頭リング」と変換されたので驚きましたが)は基本的に陽ではなく陰の人なので、ハリウッド・ミュージカルのスターらしさ--滲み出すユーモア、洒脱さ、ソフィスティケーション に欠ける--って気がしておりましたが、ラストのあの顔!=微かな微笑みへの表情変化 で、全てオッケーになりました。あたかもオセロで黒がすべてひっくり返って白に変わったみたいな感じで・・・。あれで、中盤やや失速した映画自体も、全て生き返りました。あの数秒を見るために、もう一度映画を観てもいい。そのような演技でした。いや、まいった。ほろ苦くも甘美なラストです。
それにしてもJ.K.シモンズが、あの程度のチョイ役だったのにも驚きました(『セッション』でのオスカー助演男優賞獲得への御礼出演って感じでしょうか?)。
帰り道には曲を口ずさみ、翌日(つまり今日)もなおメロディーがずっとぐるぐるしてます。良いミュージカルならではの現象ですね。
| 固定リンク
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 「ラ・ラ・ランド」:ラ・ラ・ラヴリー、チャ・チャ・チャーミング!:
» ラ・ラ・ランド~エマ・ストーンのデカ目全開 [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。原題: La La Land。デイミアン・チャゼル監督。ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、キャリー・ヘルナンデス、ジェシカ・ローゼンバーグ、ソノヤ・ミズノ、ローズマリ ... [続きを読む]
受信: 2017年3月10日 (金) 00時15分
» 『ラ・ラ・ランド』 ひとときの夢のような…… [映画批評的妄想覚え書き/日々是口実]
『セッション』のデイミアン・チャゼル監督の最新作。
第89回アカデミー賞には史上最多タイの14部門でのノミネートという前評判の高い作品。
原題の「La La Land」は、「LA」つまり作品の舞台となるロサンゼルスやハリウッドのことを指す。町山智浩によれば、「彼女はラ・ラ・ランドに住んでいるんだ」という使い方をすると、「彼女は夢見がちなんだ。現実を見ていないんだ」といっ...... [続きを読む]
受信: 2017年3月10日 (金) 00時22分
» 『ラ・ラ・ランド(La La Land)』デイミアン・チャゼル監督、ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、J・K・シモンズ、他 [映画雑記・COLOR of CINEMA]
注・内容、台詞に触れています。『ラ・ラ・ランド』La La Land監督 : デイミアン・チャゼル出演 : ライアン・ゴズリングエマ・ストーンJ・K・シモンズジョン・レジェンド、他 ※Memo1●映画 [続きを読む]
受信: 2017年3月10日 (金) 12時41分
» ラ・ラ・ランド [Akira's VOICE]
夢を追いかける姿は美しい。
歩いた道はけっして無駄ではない!
[続きを読む]
受信: 2017年3月10日 (金) 16時52分
» 映画『ラ・ラ・ランド』★メロディに心掴まれ怒涛のラストにグッと来る [yutake☆イヴの《映画★一期一会》]
作品について http://cinema.pia.co.jp/title/170115/
↑あらすじ・配役はこちらを参照ください。
・セブ:ライアン・ゴズリング
・ミア:エマ・ストーン ←好き☆
女優志望のミアと、ジャズの店を持ちたいピアニストのセブ。
歌って踊ってのミュージカルですが、まずは
サビとなるメロディラインに、心掴まれ♪
ポスターの2人の踊り...... [続きを読む]
受信: 2017年3月11日 (土) 00時52分
» 映画:ラ・ラ・ランド La La Land アカデミー賞史上最多の14部門のノミネートの今作の感想 = 何てマジカル! [日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~]
今年のアカデミー賞史上最多の14部門 ノミネート。
月曜午前中に、その結果が発表される。
その怒涛のノミネーションは以下。
・作品賞
・主演男優賞・主演女優賞
・監督賞
・脚本賞
・作曲賞
・主題歌賞(City of Stars、Audition の2曲ダブル・ノミネート)
・撮影賞
・衣装デザイン賞
・編集賞
・美術賞
・音響編集賞
・録音賞
昨日日本公開されたため、結果が出る前にフラットな目で確かめたいと初日に駆けつけた!
冒頭のミ... [続きを読む]
受信: 2017年3月11日 (土) 08時09分
» ラ・ラ・ランド/LA LA LAND [我想一個人映画美的女人blog]
歌で始まる映画にハズレなし
歌、恋、夢、ダンス❣️これ往年のハリウッド名画のラブロマンス&ミュージカルをカラフルに現代アレンジした感じロマンチックでほろ苦。
これは好みに分かれるかなライアンが久しぶりに等身大のリアルな男をチャーミングに演じてて魅了さ...... [続きを読む]
受信: 2017年3月11日 (土) 08時13分
» ラ・ラ・ランド [風情の不安多事な冒険 Part.5]
アメリカ
ロマンス&ミュージカル
監督:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング
エマ・ストーン
ジョン・レジェンド
J・K・シモ ...... [続きを読む]
受信: 2017年3月11日 (土) 11時45分
» ラ・ラ・ランド [象のロケット]
夢追い人が集まる街アメリカ・ロサンゼルス。 映画スタジオのカフェで働くミアは女優を目指しているが、オーディションに落ちてばかりだった。 ある日、ミアは場末のバーでピアノを弾く青年セブことセバスチャンと出会う。 彼はいつか自分の店を持ち、本格的なジャズを思う存分演奏したいと願っていた。 恋に落ちた二人は互いの夢を応援し合うが、徐々に気持ちがすれ違っていく…。 ミュージカル。... [続きを読む]
受信: 2017年3月11日 (土) 15時53分
» 「ラ・ラ・ランド」(1回目) [或る日の出来事]
うれしくて、楽しくて、1曲めから、ほとんど泣きながら観ていた。 [続きを読む]
受信: 2017年3月11日 (土) 19時44分
» ラ・ラ・ランド・・・・・評価額1800円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
そこは、夢を見られる街。
二年前、鮮烈な音楽バトル映画「セッション」で、センセーションを巻き起こしたデミアン・チャゼル監督の最新作は、前作とはガラリとムードを変えたミュージカルスタイル。
タイトルの「ラ・ラ・ランド」とは、ハリウッドの俗称であるのと同時に、陶酔して夢の中にいるような精神状態のことでもある。
ジャズピアニストで自分の店を持ちたいと願うセブ、女優を目指すミアという二人の...... [続きを読む]
受信: 2017年3月12日 (日) 20時59分
» ラ・ラ・ランド [映画的・絵画的・音楽的]
『ラ・ラ・ランド』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。
(1)米国アカデミー賞の様々な部門でノミネートされている作品ということで、映画館に行きました(実際には、大本命視されていた作品賞からは外れてしまいましたが)。
本作(注1)の冒頭では、ロサンゼルスのハイ...... [続きを読む]
受信: 2017年3月13日 (月) 06時20分
コメント
TBありがとうございます。
ヤフーブログからは、TBできなくなってしまいました。
返礼TBは、FC2ブログから行いますね。
よろしくお願いします。(*^_^*)
http://yutake2415.blog.fc2.com/blog-entry-2255.html
投稿: yutake☆イヴ | 2017年3月11日 (土) 00時54分
yutake☆イヴ様、いつも楽しく読ませていただいてます。
これからもよろしくお願いいたします。
投稿: 大江戸時夫 | 2017年3月11日 (土) 22時43分