「バーニング・オーシャン」:安全はコストよりも重い
映画『バーニング・オーシャン』の原題は、“Deepwater Horizon”。メキシコ湾沖にある石油掘削施設の名前です。2010年に実際に起きた大事故の映画化。スタイルとしては、『タワーリング・インフェルノ』に代表されるような典型的ディザスター・ムービーです。ただ「実話」に引っ張られちゃったきらいもあり、映画の構築としてはそれほど巧みではありません。
何しろ1時間47分の映画なのに、ちょうど半分ぐらい過ぎてからようやく事故が起こります。それまでの前置き部分がえらく長いのです。しかも脚本も演出もあまり手際が良くないもので、(一通りやるべきことはやっているのですが)結構退屈してしまいます。カート・ラッセルが出ても、ジョン・マルコヴィチが出ても、特に「いよっ、待ってました」って感じでもなく、二人とも老けたなあって印象のみでした。ケイト・ハドソンもいつの間にか齢(よわい)を重ねておりましたね。あ、そうか、彼女とカート・ラッセルは義理の父娘共演だったわけですね。
災害現場の描写はかなりの迫力です。噴き出す!爆発する!燃え上がる!・・・でも、後半は延々とそういった描写なので、ちょっと飽きちゃうことも確か。しかもアクションにおいては、どこでどのような事が起きているのかを的確に描出できていないので、派手ではあるけれど迫るものがないんですよねー。
安全にはコストがかかる。だけど、安全はすべてに優先させねばならない。安全をコストの犠牲にしてはいけない。 わかりきった事ですが、どの国においても繰り返し破られ、大きな人災が起きて来ました(2011年の日本においても)。それを訴える意味では意義深い作品ではあります。しかし人災の素となった(ように描かれている)人たちは結局起訴取り下げになったなどと知ると(最後の字幕に出て来ました)、ちょっと釈然としない思いを感じたのでありました(優秀な弁護士が着いたんでしょうねえ)。
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