« 「家族はつらいよ2」:今回も笑いの感覚がさびてて・・・ | トップページ | 「海辺のリア」:まさに仲代達矢の一人舞台 »

2017年6月 4日 (日)

l「光」:美しさと情感と

359704_003
映画『光』のシンプルなタイトルは強いですね。よくこんなタイトルが手つかずで残っていたものだと思ってしまいました。

河瀨直美監督は前作『あん』で、「普通の物語映画」を作って方向転換したわけですが、本作ではその方向性を継続しつつ、従来の河瀨作品にあった光と影で物語る特質も生かしています。

359704_001
孤独な魂同士の邂逅。反撥から始まる恋愛映画の側面が、とても良いです。そもそも「この二人が、なんで??」という側面があるのは確かですが、それをも超えていくだけの魅力があります。終盤の二つの魂の接近と、ラストの情感などは、まさに映画ならではの美しさではありませんか。

359704_004

その魅力を支えた撮影(百々新)の力も評価すべきでしょう。この人、今年43歳の写真家で、映画を撮るのは初めてなのだそうです。 視力を失ったカメラマン(永瀬正敏)がローライの二眼レフで主人公(水崎綾女)を撮った「最後の写真」ってのがほんの数秒映し出されますが、これがいい写真なんです! ぼんやりしたフォーカスの中、彼女の柔らかい表情が奇跡的に出ていて、もっとよく見たい!と思ってしまいました。

359704_005

水崎綾女は2012年の『BUNGO~ささやかな欲望~』(オムニバス)内の一編『乳房』でなかなか印象的でしたが、この『光』では「ブレイクした」と言っていい上質なパフォーマンスでした。永瀬に顔を触られる場面などは、エロティックなニュアンスも醸し出していて・・・。

永瀬正敏は近年の「ぶっきらぼうで朴訥な」永瀬ですが、ラストなどはいい味を出しておりますよ。

美しさと情感と・・・河瀨監督のフィルモグラフィにまた一つ良作が加わったと言えるでしょう。

|

« 「家族はつらいよ2」:今回も笑いの感覚がさびてて・・・ | トップページ | 「海辺のリア」:まさに仲代達矢の一人舞台 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/42098/70766960

この記事へのトラックバック一覧です: l「光」:美しさと情感と:

» 『光』 映像を言葉にすることの難しさ [映画批評的妄想覚え書き/日々是口実]
 『あん』『2つ目の窓』など河瀨直美の最新作。  映画の“音声ガイド”という珍しい仕事を取り扱った作品。  映画の“音声ガイド”の仕事をしている美佐子(水崎綾女)は、その仕事で弱視のカメラマン・雅哉(永瀬正敏)と出会う。美佐子の仕事に対して遠慮なくズケズケと意見を述べる雅哉に苛立ちつつも、美佐子は雅哉のことが気にかかるようになり……。  映画の音声ガイドとは、視覚障がい者の...... [続きを読む]

受信: 2017年6月 5日 (月) 00時28分

» [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。河瀬直美監督。永瀬正敏、水崎綾女、神野三鈴、小市慢太郎、早織、大塚千弘、大西信満、堀内正美、白川和子、藤竜也。(声)樹木希林。「あん」に続く、河瀬直美、永 ... [続きを読む]

受信: 2017年6月 5日 (月) 00時36分

» [象のロケット]
ディスクライバー(音声ガイド原稿制作者)の尾崎美佐子は、視覚障害者向けの映画音声ガイドの仕事に携わることになった。 そこで視力を失いつつある弱視の天才カメラマン中森雅哉と出会う。 表現に細かく注文を付ける雅哉に反発する美佐子だったが、彼が過去に撮影した写真を見て心を動かされる。 しかし音声ガイドの方は、何度書き直しても皆が納得するものができないのだった…。 ラブ・ストーリー。... [続きを読む]

受信: 2017年6月 6日 (火) 08時16分

» ショートレビュー「光・・・・・評価額1650円」 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
降り注ぐ、光の中へ。 リュミエール兄弟が、パリのグラン・カフェでシネマトグラフ・リュミエールを披露して以来、映画とは暗闇の中の光の芸術である。 では、映画から光を封じた時、それでもなお、映画は映画たり得るのだろうか。 河瀬直美監督の「光」は、ハンセン病をモチーフにした「あん」に続いて、視覚障がいという社会的マイノリティを軸に、人生における光=希望への渇望を描きながら、同時に「映画と...... [続きを読む]

受信: 2017年6月 7日 (水) 22時48分

» 映画「光」 [FREE TIME]
映画「光」を鑑賞しました。 [続きを読む]

受信: 2017年6月 7日 (水) 23時00分

» 光 ★★★ [パピとママ映画のblog]
第68回カンヌ国際映画祭ある視点部門オープニング作品に選ばれた『あん』の河瀬直美監督と永瀬正敏が、再び組んだ人間ドラマ。永瀬演じる弱視のカメラマンと、視覚障害者向けに映画の音声ガイドを制作する女性が、それぞれに光を求めて葛藤しながら心を通わせていくさまを...... [続きを読む]

受信: 2017年6月10日 (土) 17時44分

» [映画『光』を観た] [『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭]
☆・・・よい映画でした。 河瀬監督の作品は、そのドキュメントタッチの中での物語構築、人物アップ多様による役者の内面の演技誘発と、いつも、私は感心させられている。 ・・・主人公・美佐子は、視覚障碍者への映像作品音声ガイド作成の仕事をしている。 とある映画...... [続きを読む]

受信: 2017年6月11日 (日) 09時58分

» [映画的・絵画的・音楽的]
 『光』を新宿バルト9で見ました。 (1)河瀨直美監督の作品ということで、映画館に行ってきました。  本作(注1)の冒頭では、階段をゆっくりと降りていく男(中森:永瀬正敏)の後ろ姿が映し出されます。どこかの劇場でしょう、男は席に着くとイヤホンを耳に当てます...... [続きを読む]

受信: 2017年6月13日 (火) 18時15分

« 「家族はつらいよ2」:今回も笑いの感覚がさびてて・・・ | トップページ | 「海辺のリア」:まさに仲代達矢の一人舞台 »