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2017年6月21日 (水)

「残像」:アンジェイ・ワイダの力強い遺言

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映画『残像』は、昨年90歳で亡くなったアンジェイ・ワイダの遺作(2016年作品)。アンジェイ・ワイダなんて完全に歴史上の人物なのに(だって、『灰とダイヤモンド』ですよ。『地下水道』ですよ。)、現在まで映画を作っていたなんて驚きです。奇蹟です。そして、その作品が枯れてなくて、力強い秀作だってことにも驚きます。怒りと願いを込めた真摯なメッセージを、我々に遺してくれました。

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ポーランドの画家であり教育者であったストゥシェミンスキが主人公。大江戸は寡聞にしてこの芸術家を知りませんでしたが、フォーマリズムの人であり、当時の前衛だったようです。彼はただまっすぐに、自分のすべきことを全うしようとするだけなのに、政治と社会がそれを許さなくなっていき、変節しなかった彼が国家に弾圧され、ひねりつぶされてしまうという話です。ひどい話ですが、さほど遠くない昔に実際起きていたことです。

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国家が個人の自由を怖れ、許さない。システムが個人の善意などは押しつぶしてしまう。信念を曲げなければ、叩きつぶされる。今もなお、世界のどこにでもある話かも知れません。右でも左でも関係なく、権力を握った組織というものは、そのような自己防衛に傾くものなのでしょう。今の日本にだって、その兆しが見えます。そう考えると、ワイダの遺言はますます重い意味を持って訴えかけて来るのです。 

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オープニングの、そしてエンドクレジットのタイトルバックが、モダンアート調で素晴らしいです。そこがまたこの作品の主張にもなっているわけです。色彩と単純な形状の美しさ。 やはり、芸術を政治利用すること、権力が芸術の自由を弾圧すること、そして政治が個人の尊厳を踏みにじること、これらはとてつもなく野蛮なことなのです。

ケン・ローチの『わたしは、ダニエル・ブレイク』もそうですが、「これだけは言わねば」という平明でパワフルな魂のメッセージが、観る者を射抜く作品です。

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» 残像 [象のロケット]
第二次世界大戦後、スターリン主義時代の社会主義国ポーランド。 国内外で名声を得ていた画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、ウッチ造形大学の教授となり、学生の尊敬を集めていた。 しかし、芸術は政治の理念を反映するものだという社会主義リアリズムに迎合せず、独自の芸術の道を進み学生を導くストゥシェミンスキは迫害され、職を追われ困窮してゆく…。 ヒューマンドラマ。 実在の画家の生涯。 ≪人はそれでもなお、信念を貫けるのか。≫... [続きを読む]

受信: 2017年6月24日 (土) 12時28分

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