「海辺のリア」:まさに仲代達矢の一人舞台
映画『海辺のリア』は、映画と言いつつも、そりゃもうえらく「演劇」なのです。そもそも仲代達矢でリアなのですから、演劇なのです。
全編のほとんどが海辺(浜辺)。あと老人ホーム前と道の上が少々です。これだけ場面が少ないわけですし、舞台で演じられたらこうなるだろうなという想像が容易にできるのです。
役者たちの芝居も、仲代、黒木華の二人は、明らかに舞台劇のようです。声を張り上げ、朗々と響かせ・・・と、映画の芝居や台詞回しではありません。
まあ小林政広監督があえてそのように作っているのでしょうけれど、それが何らかの効果を上げていたかと言えば、うーん、どうなんでしょう? 少なくとも終盤の波打ち際での仲代の(気持ちよさそうな)一人芝居は、正直観ててしんどかったです。この映画の面白さに、全くつながって行かないのです。
それどころか、仲代さんがこの世に別れを告げているかのような芝居に見えて、あまりにも「遺作感」が漂い過ぎていて、なんだか心配になってしまいました。
これまでの小林監督作品では感じたこともなかったことですが、今回ばかりはいったい何をやりたかったのかがわかりませんでした。現代的なリア王の話を仲代さんで、ってことかも知れませんが、それなら(仲代とのコンビで作った)『春との旅』みたいに作るとか『日本の悲劇』みたいに作るとかした方が自然ですよね。 仲代達矢というグレートな対象にのめり込み過ぎたあまり、「面白い映画を作る」という大前提がどこかへ行ってしまったんじゃないかなあ、などと(生意気ながら)思ってしまったのでした。
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