「武曲 MUKOKU」:綾野剛の「役者バカ」ショー
映画『武曲 MUKOKU』は、熊切和嘉の新作と言うよりは、ザ・綾野剛ムービー。若手のホープ=村上虹郎を従えて、トラウマとタナトスに彩られた狂気の世界を駆け抜けます。それにしても、綾野剛ってこういうダーティーな役--ダメ人間でクズで心が弱くってーーが、ほんとに好きですよねえ。今、日本一「役者バカ」って言葉が似合う役者になっちゃいました。よだれ垂らしたりもしてたけど、ホントそういうの好きですもんねえ。
彼に狂気を植え付けたのは、父親役の小林薫なのですが、『キセキ あの日のソビト』でも同じような狂気のスバルタ親父やってましたよね。同じように日本刀持ち出してましたよね。奇妙な符合であります。 あ、それなら風吹ジュンだって、ここでも『家族はつらいよ2』でも小料理屋のおかみではありませんか。何なんでしょう? 日本は役者の層が薄いってこと??
剣道シーンの迫力はなかなかのもの。姿勢や素振りを見ても、役者たちがきちんと訓練して基礎を会得していることがわかって、そこらが作品の質を高めています。クライマックスの雨中の死闘の力感と真剣勝負のダイナミズムは、さすがです。まあ『七人の侍』から『その夜の侍』(これにも綾野剛が出てますね)まで、ギリギリの死闘には雨がつきものですからね。役者二人の気合いと身体性も、凄いものがありました。
(以降少々ネタバレあり) 身体性といえば、最終盤で壊れていた心が治った(と思われる)綾野剛の肉体が凄かったです。まさに筋骨隆々で、キンチョーのCMの笹野さんみたいにCGか?と思っちゃうほど、いつもの綾野剛のカラダではありませんでした。さすがの「役者バカ」アプローチです。
そして最後に、綾野、村上の両名が防具をつける所作をじっくりと撮った場面があって、これは素晴らしい様式美の世界でしたねえ。
| 固定リンク
コメント