「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」:ネコ映画の最高峰
映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の原題は“A Streetcat Named Bob”。“A Streetcar Named Desire(欲望という名の電車)”のもじりですね。これ、ポスターをちらっと見た限りでは(タイトルもね)、ほのぼのとしたネコ映画なんだろうなあと思っていたのですが、そうではありませんでした。なんと実話に基づいたベストセラーの映画化で、主人公の青年は薬物中毒者。えー、それって暗い話? とか思って観てみると、これが意外やとっても出来の良いステキな作品なのでした。
脚本も演出も演技もみな高い水準で、心に訴えかける一級の作品になっています。「ネコ映画の最高峰」と言えるのではないでしょうか。 監督はベテランのロジャー・スポティスウッド。デスパレートな境遇から救われていく主人公に寄り添う丹念な描写、戸惑う家族の描写から、周囲の人々との交流、そしてもちろん猫のボブ(実際のボブ本人、いや本猫です)の描写まで、まなざしが(時として厳しくも)暖かいのです。じんわりと、嫌みなく感動させてくれます。 主人公の禁断症状との闘いの場面なども、実に上出来でした。
それにしても、このボブくん、名演を引き出されています。まあ演じるも何も、本猫なのだから当たり前なのかも知れませんけど。いい顔してます。大江戸はこういうタイプの顔、そして茶トラが好きなので、結構にんまりとしてしまいました。主人公役のイケメン俳優さんとのからみも抜群です(肩乗り猫だし)。ちなみにこのイケメンさん(ルーク・トレッダウェイ)、顔の良さばかりじゃなく相当繊細な演技力の持ち主です。
(以降ネタバレあり) ラストで、ボブとの自伝を出版した主人公がサイン会をやる場面に、原作小説の作者、つまりこの主人公のモデルの人が出て来て、「この本は僕の人生そのものだ」とか言います。よくある楽屋落ちですが、その後のエンドタイトル場面に彼の写真が出て来るのでわかるってところが(もっともイギリスでは有名なので、写真が出る前からわかっちゃうのでしょうけれど)、しゃれてます。
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