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2017年9月17日 (日)

「三度目の殺人」:挑戦的なモヤモヤ感

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映画『三度目の殺人』は、かなりの曲者。東宝の、福山雅治/役所広司・広瀬すず主演のメジャー作で、こんなのやっちゃっていいんでしょうかねえ。ってぐらい、観終わってモヤモヤする作品。あの件も、あっちの件も、謎の回収を行わず、観客に判断を委ねた形。普通の娯楽映画だと思って観ていると、面食らうはずです。小生はまあ「あー、是枝さん、チャレンジングだなあ」と思って観てましたけど・・・。

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主役三人に限らず、吉田鋼太郎や斉藤由貴、橋爪功、市川実日子らも含めて、役者たちの芝居合戦です。中でもやはり得体の知れない「空(うつ)ろな男」を演じる役所広司が、「引きの芝居」で只ならぬ空気を発散します。接見もの(?)ってことで、『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士をやや思わせたりもします。彼と福山の弁護士が接見室のガラスの両側から手のひらを合わせる場面は、あたかも牢の檻ごしにレクターとクラリスの指がからまる名場面を連想させるものでした。

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これ、是枝裕和監督のオリジナル脚本なのですが、さすがですよね。殺人事件の捜査を通して人間に迫るなどという、『飢餓海峡』とか『砂の器』みたいな、日本映画の衣鉢を継ぐ物語を構築しながら、実はそこから離れた独自の道を歩んでいます。ダイアローグもうまいし、いい台詞いっぱいありますよ。容疑者に接するうちに、自分というものが崩れていく福山の変化だとか、うまいですねえ。

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(以降ややネタバレあり) この映画、ヴェネチア映画祭では「黒澤明の『羅生門』の伝統を受け継ぐ」云々と言われたそうですが、確かに二転三転する「藪の中」感は、そうかも知れませんね。そして本当の真実なんてものは存在せず、それぞれの人がそう思いたい「真実」があるのみってあたり、なかなかオトナな映画です。 役所広司とガラスに映った福山の顔が二重写しになるという示唆に富んだ場面がありましたが、本作の斉藤由貴も現在巷を賑わせている不倫騒動とダブって見えて、何か妙な気分でありました。

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