「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」:汚れつちまつた悲しみに
映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』は、大根仁らしいポップで都会派の感覚に溢れたコメディー。そして、またもギョーカイものです。楽しいです。笑えます。よく出来てます。マンガが原作なのだそうですが、完全に大根ワールドにしちゃってます。この計算された軽薄さ、嫌いじゃありません。ってゆーか、好きです。
原作は知らないけど、映画としては妻夫木聡と水原希子のキャスティングが見事にハマりました。妻夫木の情けなさ、ダメさ、でもその中にあるちょっとの真実みたいなもの。水原の「男を掌で転がす」小悪魔的な演技性と、でもこういう風にしか生きられないんだろうなあ、この人という感じ。まあ、彼女のようにしていたら、終盤のような事件が起きるのも当然と言えば当然でしょう。
(以降ネタバレあり) 終盤、4人の位置を結べば十字架になるように配置されたり、狂わせガールは「みんながそうして欲しいようにしただけ」だという空っぽの器ぶりを見せるなど、まるで『三度目の殺人』じゃないかと思ったら、いつも鋭い佐藤秀さんのブログでも同様の指摘をなさっていました↓
http://blog.livedoor.jp/y0780121/archives/50865384.html
まああの作品も、もしかしたら広瀬すずが狂わせガールだったのかもってところはありますからねえ。
ラストのコーロキ(妻夫木)の涙は、あたかも「汚れつちまつた悲しみに」って感じで、大人にはちょっとしみるところがありました。実はここらが、大根仁の真骨頂なわけです。
エンドクレジットの映像は、着衣の妻夫木聡が東京湾を泳いでいるスローモーションです。これ、映画『コミック雑誌なんていらない』と同名の内田裕也(同映画主演)のアルバムのジャケット写真であり、同じ頃パルコのTVCMで使われた映像=着衣の内田裕也がNYのハドソン・リバーを泳いでいるスローモーション とまるで同じ感覚です※。大根さん流のオマージュなんでしょうね。まあ、確かに「俺にはコミック雑誌なんていらない 俺の周りはマンガだから(作詞:内田裕也)」ってな話ではありましたけどね、本作も。
※映画『コミック雑誌なんかいらない』の本編内には、泳ぐ内田のシーンはありません。
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