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2017年9月 9日 (土)

「ダンケルク」:新たに「映画を発明」している凄さ

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映画『ダンケルク』が、ただただ凄かったです! 予告編を見て想像できる仕上がりの何倍ものクォリティで圧倒します。

ちなみに本作は65mmのフィルムで(デジタルではなく)撮影し、仕上げたのだそうですが、小生が観た丸の内ピカデリーでは、フィルム上映(35mm)でした。よりノーランの意図に近いのかと思っております。 でもそれよりも何よりも、できるだけ大きなスクリーンで(できれば見上げる感じに前の方の出来で)映画に入るように体感すべき作品です。これをそのうちスマホで見ようなんて考えてる人がいたら、それは別モノですからね。『ダンケルク』じゃなくて、『たんけるく』か何かですからね。

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それぐらいリアルに「戦場の中にいるように」感じさせてくれる映画だし、撮り方なのです。ほとんどサイレント映画に近いように(特に冒頭しばらく)、言葉に頼らない映像で、戦場の不安や恐怖を体感させてくれます。「戦場では、生きるも死ぬも運次第」なのだということを、つくづく実感できるのです。ここが凄い。

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そしてこの作品を観ていて思ったのは、クリストファー・ノーランが映画というものを新たに「再発明」したってこと。だって、これまで6,000本以上も映画を観て来たけど、こんなの観たことありませんよ。陸=1週間、海=1日、空=1時間の時間軸を交互に同時進行的ににミックスさせつつ描いたり、言葉に頼らず物語を語ったり、しかもそれをアート・フィルムのようなタッチで語る。それでいて、めっぽう新鮮でめっぽう面白いのです。これを離れ業とか偉業とか呼ばずして、何と言いましょう。うーん、『インターステラー』も凄いと思ったけど、ノーランどんどん手が付けられなくなって行きます。ほとんどキューブリックの域に達しました。何と言っても、この時代になって、改めて「映画を発明しようとしている」試み、それが凄いです。

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でもこの作品を観ていて「誰かの映画に似てるなあ」と感じて、はたと思い当たったのがテレンス・マリック。なるほど、戦争や人間を敵だ味方だを超越した巨(おお)きな視野で捉える姿勢と、思想を超えた研究者のような観察眼、そして大作でも自主映画のようなテイスト。似てますね。

ハンス・ジマーの音楽も、不安をあおり緊張を高めながら、映像の凄さを増幅させていく圧倒的な効果を上げています。凄いです。

普通の(ハリウッド的文法の)戦争映画を期待すると、「あれっ」となるかも知れません。違うんです、もっと「上等」なんです。新発明なんです。この凄さは今後、歴史が証明してくれることでしょう。

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