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2017年9月27日 (水)

「禅と骨」:異色の禅僧の欲と妄執

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映画『禅と骨』は、あの『ヨコハマメリー』の中村高寛監督による11年ぶりの新作。まあその間にいろんな企画がボツになったり水子になったりしたのを、『キネマ旬報』の中村監督の連載で知ってはおりましたが、その果てにかなりの異色作が出来上がりました。

ドキュメンタリーでありながら、役者を使ったドラマ部分もありますし、アニメーション部分だってあります。そしておそらくは、当初の想定からどんどん離れていった部分こそがスリリングで、作品の核となっているのです。

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このヘンリ・ミトワさんの波瀾の人生は確かに面白い。だけど、映画の中心はそこではないのです。90を過ぎたミトワさんの母へのオブセッションだとか、後半出て来る家族や撮影隊との葛藤や緊迫感こそが、本作のキモなのです。その根源には、自分を立派に見せたいというミトワさんの欲があるのです。およそ、禅僧らしからぬ態度かも知れませんが、ま、人間そういうものかも・・・と思わせるような映画です。

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きれいごとのドキュメンタリーで済ませるのなら、数奇な運命を経て大変立派な禅僧として映画『赤い靴』の製作に執念を燃やしたヘンリ・ミトワの生涯ってことで、楽に作れたはずです。千宗室さんとも親しいんですもん。 でも中村監督はそうはしませんでした。むしろ家族の面倒くささとか、ミトワさんの妄執を通した「人間の業」みたいなものにフォーカスして行きました。その結果、とっても「食べにくく」なりましたが、骨のある映画にはなったと思います。

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それにしてもこの人、家族からは疎んじられたり憎まれたりしていたことがよくわかります。まあ、勝手な人で家族にとってはサイテーだったんだろうなあって感じです。でも撮影協力者だったご家族の醜い面まで撮って公開しちゃうっていう監督の覚悟が、一番スリリングな見どころかも知れません。ドキュメンタリー作家って、因果な商売ですね。

エンディングに横山剣が歌う『骨まで愛して』が流れて来て、笑っちゃいました。

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