「74歳のペリカンはパンを売る。」:食い足りないドキュメンタリー
映画『74歳のペリカンはパンを売る。』は、浅草(というか台東区寿)の人気パン店ペリカンのパン作りを描くドキュメンタリー。
ここ、パン好きの間では有名ですし、大江戸も食パンをいただいて食べたことがあります。おいしかったけど、特にそんな大騒ぎするほどの味でもなく、まあ上出来で真っ当なパンの良さって感じでした。それはみんなが思う所のようで、この映画でも多くの人が、ここのパンを「普通」とか「空気みたい」とかいう言葉で評しています。
そんなペリカンさんは、2種類のパン(食パンとロールパン)だけで長期にわたって、大きな支持を獲得しています。デパートに出店したりせずに、自店だけの身の丈規模の商売を長年おなじように続けている--その「変わらなさ」がブランドになっているのです。
タイトルで「74歳のペリカン」っていうから、創業者とかが出て来るのかと思ったら、このお店が出来てから74年ってことなんですね。
でも80分と短めの映画なのに、パン作りに関してやたらと同じ場面が繰り替えされて、飽きちゃいます。もっといろんな場面を見たかったし、パン作りに限らず、このペリカンというお店をいろんな角度から見てみたいと思いました。だって、それがドキュメンタリーの探求心ってものでしょ。なのに、この映画は妙に掘り下げないんですよねえ。インタビューも同じ人が何度も登場するし、割と普通の事言ってるし、広がりに欠けるんです。これなら1時間でまとめられますよね。
生きていれば今80歳ぐらいだった三代目が鬼籍に入っていて、30歳ぐらいの四代目はまだ経験不足ということで、ドキュメンタリーを作りにくいタイミングだったとは思います。それでも、もうちょっと何とかできたんじゃないかとも思いました。 一番のベテラン職人さん(ご本人は「職人」という言葉を嫌っているようでしたが)が、やけに「語る」んですけど、作る人があそこまで自賛的に語っちゃあ美しくないですよね。やっぱり主役である「商品」に語らせなきゃ。 むしろ映画を作る側に「遠慮」があったのでは?と思わざるを得なく、最後まで食い足りなさを拭えませんでした。
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