「エルネスト」:時代と場所に翻弄された純粋な魂
映画『エルネスト』は、なかなか興味深い作品でした。チェ・ゲバラの訪日とか、ゲバラに目をかけられた日系人=フレディ前村の生き方と死に方とか、キューバ側市民から見たキューバ危機とか、題材の切り取り方がいいですね。もちろん、それを料理するお手並みも。大江戸は、阪本順治監督とはどうにも性が合わないようで、『キネ旬』ベストワン上位になるような作品でも全然評価していなかったりするのですが、この作品は悪くないですね。
ちなみに小生の好きな阪本作品をフィルモグラフィーで調べてみたら、2017『エルネスト』、2007『魂萌え!』、1997『傷だらけの天使』と、ちょうど10年周期なのでした(その10年前の1987年はまだデビュー前でしたぁー)。
ゲバラものとしても、『モーターサイクル・ダイアリーズ』とかソダーバーグの『チェ』二部作よりも面白いと思いました(と言っても、本作ではゲバラは脇役なのですが)。
二十代前半の役を演じるオダギリジョーが、やけにみずみずしいのです。澄んだ瞳と純な心を見事に表現しておりました。魅力的な人物造形です。 また、医大の学生たちの群像描写も、とても生き生きとしています。ここらへんは、海外での撮影経験も豊富な阪本監督だからこその部分ですね。変に気張らないで、安定感があるのです。日本で撮ってる時より、よっぽど上等です。
今こうして見ると、なんとも「もったいない」人生だと思えます。なんで?と・・・。でもフレディにとっては、これこそが自分の魂に従った「リアル」な生だったのでしょう。時代と場所で、人の一生は決まっていくのですね。
ゲバラが広島の平和記念公園を訪れた時に「二度と過ちは繰り返しませぬ」の碑文を見て、「主語が無い」という部分は、論議を呼ぶことを覚悟で阪本監督が攻めちゃってる部分ですね。まあ、大江戸は基本的に「思想に合う合わないで映画の価値を判断するのはやめようよ」派なので、そこにばかり拘泥しないでほしいとは思っておりますが・・・。
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コメント
ラストの老人たちの霊廟参詣はよけいでした。
処刑で終わりだと切なすぎるので救いを求めたのかもしれませんが過剰。映画の中だけで完結して欲しかったです。
投稿: まっつぁんこ | 2017年10月14日 (土) 06時14分
まっつぁんこさん、どーも。
うーん、そうかも知れないのですが、まあ阪本監督としては、史劇、時代劇ではなくて、こういう志の人(エルネスト・マエムラ)がリアルにいたからこそ現代の平和につながっていると言いたかったのでは?
つまりフィクションではない今日性を強調したかったのでは?というのが大江戸の感想です。
ま、感想は人それぞれですので・・・。
投稿: 大江戸時夫 | 2017年10月14日 (土) 12時55分