「散歩する侵略者」:愛は勝つ
映画『散歩する侵略者』は、舞台作品の映画化だということを知っていたためか、かなり演劇的な観念臭が鼻につきました。でもまあ、嫌いではありませんよ(大好きでもありませんけど)。そこそこ大きな構えの娯楽映画を撮ると失敗してしまうと小生が思っている黒沢清(『リアル 完全なる首長竜の日』とか『クリーピー 偽りの隣人』とか)にしては、健闘したのではないでしょうか。
だって、この終盤って結構好きですよ。「愛」の映画になってますし。思えば、『岸辺の旅』も幽霊譚の形を借りた奇妙な愛の物語として、ネオ黒沢の到来を告げておりましたが、本作もその路線です。非現実の助けを借りて、最後は不思議なほどに「愛」をうたいあげております。ちょっと感動します。
日常のすぐ先にある終末というこの空気は、某国からミサイルが飛んで来そうだという現在、妙にタイムリーに感じられます。それは突然やって来るし、避けられないのでジタバタしても無駄っていう諦念。困ったことにリアルです。その時に「サンプル」として生き残ることが、果たして幸せなのかどうか・・・。
松田龍平も長澤まさみも長谷川博己も、割と「いつも通りの演技」です。まあ、黒沢さんって役者の芝居にはあんまり興味なく自由にやらせていそうな感じがしますからねえ。 (以降ややネタバレあり) それよりも、黒沢がやりたかったんだろうなあって感じたのは、終盤における低空飛行の爆撃機vs.長谷川博己の対決。『北北西に進路を取れ』をやりたかったんでしょうねえ。
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